カップルが自分たちで作る結婚指輪が人気を集めている。手作りの体験を共有し、2人で積み重ねる時間を大切にしたい人が増えているからだ。
愛知県清須市の会社員山崎義祥(よしあき)さん(28)、妻の里咲(りさ)さん(25)は8月に結婚したばかりの新婚さん。「特別なものが欲しくて」と里咲さんが提案し、結婚指輪作りを体験した。
向かった先は、名古屋市千種区の宝飾店「ケイウノ本山本店」。2人は成長と繁栄を意味する唐草模様のデザインを考えた。工房では、指輪の原型となるリング状のロウ素材を削り、模様を入れた。その後、スタッフが原型の周りを石こうで固める。原型を取り出し、熱したプラチナを流し込んで指輪が出来上がる。2人は後日、完成品を磨くために再来店する予定だ。義祥さんは「工作をしているようで楽しかった。一生の思い出になる」。
ケイウノは3年前、「手作り指輪」を始めた。結婚式の招待状を作り、披露宴会場の装飾も自分たちで手がけるカップルが増えていることに着目した。SNSで体験を伝えるカップルも現れ、利用者は計1500人に。原型から作ると完成まで約1カ月。価格は貴金属の使用量で異なるが、数時間で完成できるコースではプラチナ素材のペアリング(2本)が12万円ほどする。
愛知、岐阜、三重の東海3県の3店で体験できる「G.festa」(本店・岐阜市)は昨年、手作り指輪の利用組数が前年の1・5倍になった。清水秀俊代表は「この3年で、手作りを選ぶカップルが急増した。毎週末はほぼ、予約で埋まっている」。製作の様子を写真に収めたり、録画したりする特典もある。
ブライダル情報誌「ゼクシィ」の首都圏版編集部は「結婚式は2人らしく、がキーワード。その影響だろう。カップルは指輪を作り、2人で時間を共有することに意味を見いだしているのかもしれない」としている。(斉藤明美)