どんな時でも、「初戦」は難しいものです。それは、大会の初戦であろうが、チームが刷新された後の初戦であろうが、同じです。そんな中、森保新監督が就任したサッカー日本代表が、11日にコスタリカに3―0というスコアで勝ったことは、試合内容を含めて手応えがあったと言えるでしょう。
今回のメンバーは、W杯ロシア大会で出場機会があまり得られなかった選手や、W杯直前にけがではずれた選手、35人の予備登録リストには入ったものの最終の23人に選ばれなかった選手たちに、満遍なくチャンスを与えようという監督の意図がうかがえました。ただ久保が呼ばれなかったことに関しては、ドイツ・ニュルンベルクに移籍した直後で、ある程度の地位をクラブで確保することを優先させる意図だったのではないかと感じています。
また森保監督の言葉からは、10月の親善試合2試合でW杯で活躍した選手を呼びはじめ、11月の2試合で融合させて、来年1月からのアジアカップに向けてチームの完成度を上げていくことが現在の目標であることが、改めて確認できました。
7日に予定されていたチリ戦が北海道の地震の影響で中止になり、1試合になった中、3バックで臨むのか、それとも4バックか、注目していましたが、4バックを選択しました。自分が得意とする3バックより、選手たちがなじみやすいやり方を選んだところからも森保監督の柔軟性が見てとれます。またチームのパフォーマンスが上がり、勝利を得られることを優先した可能性もあります。
今のサッカーは相手のどんなシステムにも対応し、試合中に変化することがスタンダードです。システムどうこうよりは、おのおのの選手が相手の立ち位置、陣形に対応して上回れる陣形、立ち位置を随時、見いだしていかなければいけません。
印象に残ったのは、代表に選ばれて日が浅い中島、南野、堂安といった選手たちに、他の選手が引っ張られた点です。この2列目の3人はパスを受けた時に「ボールを失わない」という選択肢ではなく、「ゴールに向かう」というリスクを冒すボールの持ち方をしていました。コスタリカが厳しくプレスに来ている状況でも、それをかわしながら前に進んでいこうとしていました。他の選手も、ビルドアップにおいてもゴール前においても、「どうやってゴールに向かうべきか」「どうやってゴールを陥れるべきか」という目的に向かってプレーしていました。
特に2点目のシーンは選手たちの積極性や冷静さがプレーに表れました。左サイドでボールを持った中島が、自分を追い越してニアゾーンに入った遠藤にパス。遠藤がニアゾーンからゴール前の南野に戻し気味に折り返し、南野が左足で決めます。あの形は、世界的な主流であるニアゾーンをうまく使った崩しの形です。ボールを持った選手を追い越していく遠藤の動きも、ゴール前への折り返しの質も高かった。
何より、南野のシュートセンスのすばらしさが出ました。南野は右利きですが、左足のシュートのクオリティーも非常に高い選手です。左足のトラップでシュートを打てるところにボールを置けたからこそ決まったシュートであり、GKと自分の間にいたDFの股の間を冷静に射抜けていました。代表の経験が少ない中では「決めたい」という感情を出やすくなりますが、それの感情を消し、冷静にシュートフォームを遂行し、フィニッシャーとしての能力の高さを見せてくれました。
もう一つ言及しておきたいのは、途中から出場した天野と守田についてです。追加招集の2人の選手が試合に出たことで、純粋な競争の原理が働いていると感じました。特に守田は今年、流通経大から川崎に入った選手で、成長著しいものがあります。守備的なポジションはボランチ、サイドバック、スリーバックと対応できるタイプです。チームがシステムを変えたり、試合の中での変形を余儀なくされたりする時に、キープレーヤーになる可能性をもっています。
こうした競争の原理を働かせたことを含めて、非常に意義深く、10月の2戦でも新たな選手の招集への期待を感じさせる一戦でした。