生き物の遺伝情報(ゲノム)を変える「ゲノム編集」。自然に起きる変異と区別できない技術を応用して様々な農水産物の開発が進む中、厚生労働省は19日、食品としてのルールづくりを始めた。実用化への期待がかかる一方、安全面への慎重な声もあがる。
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筋肉量を抑える遺伝子を壊して肉量を多くしたマダイや牛、芽に毒がないジャガイモなど消費者や作り手にメリットがある品種が、続々とつくられている。米国農業大手も参入し、開発競争は世界的に激化。こうした状況を背景に政府は6月、統合イノベーション戦略を閣議決定し、技術を早く活用させようと厚労省、環境省に法令上の取り扱いの明確化を求めた。
ゲノム編集は、遺伝子が載ったDNAを狙った場所で切って変異を起こさせる。切った部分がつながる際に、異常が生じて、遺伝子の機能が変わったり、壊れたりする。DNAを切る材料に遺伝情報が含まれるため、作業中は遺伝子組み換えと同じ状態になるが、取り除ける。このため最終的には、自然に起きた突然変異と区別できない状態をつくれる。
農業分野では遺伝情報を変える手法として遺伝子組み換えがあるが、法令で規制されている。一方、最終的に外部の遺伝子を含まなければ、遺伝子組み換え食品の定義にあたらず、ゲノム編集の使い方次第で、「規制外」の食品をつくれることが課題だった。
厚労省が19日に開いた調査会では、今後こうした食品が市場に出てくる状況に備え、今年度末までに必要なルールの検討を進めると決めた。ゲノム編集では、DNAを切ったところに外来の遺伝子を入れることもできる。この場合は、遺伝子組み換え食品にあたる。
一方、環境省では7月から生物多様性を守るカルタヘナ法上の位置づけを検討してきた。専門家会合は8月、ゲノム編集を使ったが外部の遺伝子が残っていない動植物を規制対象外とする方針案を了承。だが、外部の遺伝子がないと確認された生物でも「法に準じた形での取り扱いが必要」との意見も相次いだ。このため、環境省は当面の措置として、こうした生物を屋外で栽培、飼育する際、改変した遺伝子や在来種への影響といった情報を事前に提供してもらう方針。ただ、法律上の義務ではなく、実効性を疑問視する声もある。
また、DNA分子の切れたところに、外来の遺伝子を取り込ませる場合は、遺伝子組み換え生物にあたり、規制対象と整理。隔離されていない屋外などで栽培、飼育する際は、在来種に影響を与えないかなどを評価し、国の承認を受ける必要がある。
■推進派と慎重派で分かれ…