広島の街を歩くと、毎日のようにカープのユニホームを着たファンと行き交う。背番号を見ると、現役から引退した選手までバリエーションは多彩。そこで、尋ねてみた。「あなたは、どうしてそのユニホーム?」
「ユニホームを着て試合を見るのは、初めて」。15日の中日戦。広島市内から訪れた林田功さん(84)は、マツダスタジアムの前で笑顔を浮かべた。着ているのは、今季での引退を表明した新井貴浩選手の真っ赤なユニホーム。「一生懸命で優しい人柄が好き。引退するので、最後に着てみました」。
高校2年、田窪優花さん(17)は、顔が好きという岡田明丈選手の背番号「17」を着て応援に。「持ち味の直球を生かしてチームを背負ってほしい」と本格派投手への成長も願う。
この日は、広島市安佐南区の自宅からユニホームを着ていった。「シーズン中だったら、ユニホームを着るのが日常的な風景だと思って育ったので、恥ずかしいとは感じません」と笑顔を浮かべた。
マスコットの「スラィリー」のユニホーム姿も。海田町の杉本光代さん(27)は「きもかわいいところが好き」。「今年は、スラィリーにとって初となる日本一を味わわせてあげてほしい」と話す。
三原市の前田康子さん(61)の背番号は「60」。背中には「YASUKO」、右袖には「2017 祝・還暦」の刺繡(ししゅう)が。「去年、子どもたちが還暦のお祝いにプレゼントしてくれた。子どもや孫の分も応援します」とほほえんだ。
カープと言えば、赤。だが、ホームカラーは白だ。そこにこだわるファンもいる。広島市西区の河野靖志さん(52)は、菊池涼介選手の白いユニホーム姿。真っ赤に染まる球場では「ちょっと違うかな」と肩身が狭く感じることも。だが、「グラウンドの選手と同じ色で応援することに特別感がある」という。
OB選手のものを着る人も。大分市から訪れた山下和臣さん(38)は、昨年まで在籍した梵(そよぎ)英心さんのユニホーム姿。「パンチ力のある打撃と華麗な守備で、カープにゾッコンになるきっかけを作ってくれた。初心を忘れないように着ています」と語る。背中には応援歌の刺繡(ししゅう)もあしらった。
2年前に引退した黒田博樹さんは根強い人気だ。山口県岩国市の荒川大五さん(47)は「強気で真っ向勝負な投球が好きでした」と魅力を語る。大リーグの好待遇を断ってカープに復帰した「男気」に、今もほれ込む。「黒田でかなえられなかった日本一を成し遂げて欲しいという気持ちも込めて袖を通しています」
愛用のユニホームを着てファンが見据えるのは、34年ぶりの宿願だ。(松崎敏朗)