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米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画の是非が最大の争点となった沖縄県知事選で、前衆院議員の玉城デニー氏(58)が、前宜野湾市長の佐喜真(さきま)淳(あつし)氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=ら3氏を破り、初当選を確実にした。翁長雄志知事の急逝に伴う知事選で、玉城氏は翁長氏の後継候補として選挙戦に臨んだ。
特集:沖縄県知事選2018
本土との溝、基地問題の行方は…沖縄はいま
午後8時過ぎ
当選確実の報道に歓声
前衆院議員の玉城デニー氏は午後7時58分ごろ、拍手に迎えられて支援者が集まる那覇市内の会場に入った。午後8時に朝日新聞などが玉城氏の当選確実を報じると、支援者ら約100人は、ワーッと歓声を上げた。
会場の最前列中央に座った玉城氏は、ほっとした様子で、フーッと上を向いて息を吐き出す場面もあった。
朝日新聞の堀江編集委員
「無党派層の7割が玉城氏」
朝日新聞の堀江浩編集委員は、沖縄県内の投票所で有権者の投票行動について聞き取った出口調査で、全体の4割を占める無党派層の7割が玉城氏に投票したと紹介した。「玉城氏が無党派の支持をかなり集めた印象」と話した。
政党支持層別の投票行動についても分析。自民支持層については「2割が玉城さんを支持した。組織をまとめ切れたと言い切れない状況」と指摘。公明支持層についても「佐喜真氏には7割少し。公明の組織とすると低い方で、玉城さんに2割台が流れている」と示した。自公が総力を挙げたが、一定の支持者が玉城さんに投票したという。
性別、年代別に関しては「玉城氏は比較的女性の支持が多かった。年代別では幅広く支持を集めた」と分析した。
ジャーナリストの屋良さん
「党派色を消した作戦が奏功」
沖縄タイムス元論説委員でジャーナリストの屋良朝博さんは「自民と公明の支持が割れたのが象徴的。公明がこんなに割れるとは。沖縄の選挙の場合、東京が主導した選挙戦をすると、うまくいかないということが続いていた。党派色を消したデニーさんの作戦が功を奏したのかもしれない」と話した。
沖縄タイムスの大野キャップ
東京からの応援「しらけた部分も」
沖縄タイムスの大野亨恭キャップは選挙戦を振り返って「沖縄の選挙は基地問題がメインテーマになり、今回は辺野古移設計画を是とするのかどうかだったが、佐喜真さんは辺野古について明言しなかった点が残念だ」と話した。
自民・公明の組織選挙については「東京から国会議員がたくさんきて支持を訴えたが、しらけてしまった部分があった」と指摘した。
当選確実となった玉城氏については「翁長知事の遺志を継ぐ事実上の後継者。辺野古の新基地建設で国と対峙(たいじ)するのはエネルギーが必要で大変なことで、ぶれずにやっていかないと今回投票した人の反発も起きかねない」との見方を示した。
ジャーナリストの屋良さん
「政府と沖縄の民意が対立」
屋良朝博さんは、沖縄県知事選は基地問題が十分に議論されなかったと指摘した。「県民にモヤモヤが広がっている。辺野古しか選択肢がないのか、別の解決策が見いだせるのではないか、そういった議論をやるべきだった」
対立か対話か、も今回の選挙で問われたが、「沖縄の人が対立しているのではない。政府と沖縄の民意が対立している。沖縄に基地を集中させているのも政府の責任。対話をする相手は誰か。基地を押しつけている政府だ」との考えを述べた。
政治部の松村デスク
与党側は非常に厳しい受け止め
朝日新聞政治部の松村愛デスクは、政府・与党の受け止めについて「佐喜真氏を推薦した与党側は非常に厳しく受け止めているようだ。自民と公明は徹底した組織戦を展開し、安倍総裁が3選を決めた直後の選挙。なんとしても沖縄で佐喜真氏を当選させ、臨時国会に向けて政権運営に弾みをつけたい狙いもあった」と紹介した。
玉城氏については「自由党の幹事長を務めてきたが、少数野党の幹事長で国会で存在感がそれほど大きかったわけではない。これから沖縄県知事として官邸に出入りすることになり、沖縄県の民意を代表する立場になる。一言が非常に重みを持ってくる」と話した。