求ム障害者(上)
公的機関で8月下旬以降、相次いで発覚した障害者雇用数の水増し。中央省庁の33機関では27機関の計3400人超に上り、大幅に下回った「法定雇用率」を来年中までに満たそうと、近く障害者の大量採用が始まる。だが、雇用の現場で今広まっているのは期待感ではなく、不安だ。
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国に報告した障害者雇用率「2・32%」はうそで、実際は「1・76%」だった――。全国の労災病院を運営する厚生労働省所管の独立行政法人「労働者健康福祉機構」(現労働者健康安全機構)がこう公表したのは、4年前の2014年10月。分母となる職員数を減らし、分子の障害者雇用数は増やすという水増しの手口を、歴代の人事担当者や幹部が引き継いでいた。
国や自治体、企業に加えて独法にも、従業員の一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇う義務がある。当時の2・3%達成には74人足りない。機構は全国の労災病院に1カ月間で採用するよう指示し、115人を一気に有期契約で新たに雇って法定雇用率を達成した。その性急な対応のひずみは、現場に現れた。
「会議録が締め切りに間に合わない。パソコンが使えると聞いて任せたが、能力が追いついていない」
14年末、関西地方の労災病院で採用を担当した男性職員は、新たに障害者を配置した部署からの相談に追われていた。
5人ほどの障害者を新たに雇い、パソコンを使った会議録の文字起こし作業やポスターづくり、患者向けイベントの運営など、看護師らの業務の一部を切り出して任せた。採用面接時に「パソコンができる」と言っていた障害者は、文字起こしを引き受けた。
しかし仕事中、作業の進め方について細かいことを何度も同僚に聞いてくる。質問のたびに作業が中断するため、本人も周囲も仕事が進まなくなっていた。採用時に分からなかった障害の特性が採用後にわかり、職場が戸惑う事態がほかの病院でも続発した。
要因の一つは、精神障害者の急…