宇部興産は2日、子会社2社の化学製品など2製品で、品質検査の不正が新たに見つかったと発表した。約20年にわたって顧客と取り決めた検査をせず、うその数値を試験成績表に書き込んだケースもあった。製品の品質に問題はないという。過去の公表分と合わせ、宇部興産の不正は計26製品に広がった。
不正があったのは、ウベコーポレーションヨーロッパ(スペイン)と宇部マテリアルズ(山口県)の2社。宇部興産は、外部の弁護士らによる調査委員会がまとめた調査結果を6月に公表し、その後の補充調査で新たな不正が発覚した。
ウベヨーロッパでは、ナイロン樹脂の原料が液体から固体になる「凝固点」を測定せずに、コンピューターが規格に合う数値を成績表に自動で入力していた。検査をしていない製品は、1997年から今年までに欧州の18社に出荷された。
2006年の内部調査で不正を指摘されたが、その後も是正していなかった。宇部興産は「当時の現地の担当者が、不正を指摘された項目を誤解したため」(広報)としている。
また、宇部マテの千葉工場(千葉県市原市)では、高純度消石灰に含まれる鉄の量の検査で、禁じられている再測定を実施。顧客への報告も怠った。不正は今年1月の一度で、出荷先は1社だった。不正に関与した社員は出勤停止3日の処分を受けた。
宇部興産は一連の不正について全ての調査を終えたとしている。(箱谷真司)
宇部興産の不正をめぐる動き
2018年2月23日
・電線や通信ケーブルを覆う材料などに使われるポリエチレン製品の一部で、顧客と約束した製品検査を実施せず、出荷時につける検査成績表に虚偽のデータを記入していたと発表
6月7日
・外部の弁護士らによる調査結果を発表。宇部興産と関連会社5社が製造するポリエチレン製品など計24製品で、検査データの捏造(ねつぞう)や改ざんがあり、組織的な不正も見つかった
10月2日
・補充調査の結果を発表。スペインのグループ会社で、顧客と約束した一部の試験を実施せずに試験成績表に記載していたほか、千葉県の工場で販売していた高純度消石灰について、禁じられている再測定を実施していた