滋賀県の三日月大造知事が同県野洲市議会の決定を違法とする裁決をし、一度は失職した市議が4日、復職した。復職したのは北村五十鈴(いすず)氏(62)。市内に生活の本拠がなく議員資格がないとして、市議会の3分の2以上の賛成で失職していた。
裁決は3日付で、同県で議員の失職を取り消した知事裁決は過去に例がないという。
野洲市議会は6月、北村氏が住民基本台帳の住所としている市内の賃貸マンションを「生活の本拠としていたとは認められない」とする委員会報告について、本会議で3分の2以上が賛成。北村氏は同28日に失職したが、これを不服として7月、県知事に市議会の決定の取り消しを申し立てた。
自治紛争処理委員の意見を踏まえた知事の裁決では、北村氏の生活拠点が市内外に複数存在し、いずれか一つを本拠と判断することは困難だと指摘。市内の賃貸マンションは「唯一の起臥(きが)寝食の場所とまではいえないものの、一部補われる形で一定の生活実態があったと認められる」とし、市議会の決定を違法と結論づけた。
北村氏は4日、「言葉にならないくらいに安堵(あんど)しています」と涙ながらに語った。今後、名誉毀損(きそん)など法的措置を検討するという。野洲市議会の矢野隆行議長は「県の結果を粛々と受け入れることしかできない。本人と面談し、復職に向けた手続きを進めたい」と話した。(真田嶺、北川サイラ)