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「毒まんじゅう」で研究現場に広がる疲弊、下がる研究力

京都大の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授のノーベル賞受賞が決まり、日本の科学史に新たなページが加わった。しかし、明るい話題の一方で、学術論文を生み出す日本の「研究力」は近年、著しく低下しつつあるとの指摘が消えない。研究者や大学を競わせる「選択と集中」と呼ばれる国の政策は、うまく機能しているのだろうか。(嘉幡久敬、小宮山亮磨)


静岡大農学部の一室。遺伝子組み換え植物を栽培する装置が6台並んでいる。使うのは本橋令子教授(51)だ。


装置の上には、電力メーターがある。消費電力をチェックするためという。「電気代の支払いだけで年間100万円から200万円。大学からのお金だけではまかなえない」と本橋さん。


大学からは、各教員に「運営費交付金」が配られている。研究室の維持や学生の教育に使うお金だ。本橋さんの場合、年に約27万円。段階的に減らされている。研究室には大学院生と学部生が計8人いる。


不足分は、応募と審査を経て獲得する研究費である「競争的資金」でまかなうしかない。


月に1本のペースで応募書類を書く。作業は週末。徹夜はざらだ。毎年秋は、頼みにしている文部科学省の「科学研究費助成事業」(科研費)の応募時期。「絶対に取らないと、研究を続けられない。プレッシャーに押しつぶされそうになる」


ただし、運営費交付金以外のお金は、電気代には充てられないなど使途に制限があるものが多い。パソコンやプリンターは自腹で買った。本橋さんは運営費交付金を「研究室の命綱」といい、少なさを嘆く。


14年前、国は国立大学を法人化し、運営費交付金の削減を始めた。競争政策の影響で、静岡大だけでなく、多くの地方大が資金不足にあえいでいる。


一方で、「トップクラス」の大学もまた、苦しんでいる。


例えば大阪大。理工系学部の教授(59)の運営費交付金は年間に約百数十万円と、静岡大よりも潤沢だ。しかし、研究室としての所帯も大きいため、「博士課程の学生にとって必要な国際学会での発表ができるぎりぎりの額」という。


大阪大の場合、競争的資金の獲得額は多い。競争的資金は大阪大を含む旧帝大などに集中的に投下されている。


いま教授が痛感するのは、研究…


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