金融庁の遠藤俊英長官(59)は9日の朝日新聞のインタビューで、シェアハウス融資などで多数の不正が発覚して一部業務停止命令を出したスルガ銀行(静岡県沼津市)について、「(不正の)端緒を次のステップに結びつけられなかった」とし、「今回の事案を真摯(しんし)に受け止めて、反省すべきを反省する」と語った。今後は内部告発などの情報を詳しく調べるなど、検査の体制を見直す。
遠藤氏は3年にわたり長官を務めた森信親氏を引き継ぎ、7月に監督局長から長官に就任した。
遠藤氏はスルガ銀の不正について、「創業家に評価されることを一つの目標にして経営が暴走した。適切な経営判断や企業統治(ガバナンス)が機能しなかった」とし、「一度立ち止まって振り返るべきだったが、自分たちの利益確保に走り、顧客に大きな迷惑をかけるビジネスに突っ込んでしまった」と指摘した。
スルガ銀のシェアハウス融資をめぐる不正は今年初めに発覚した。金融庁には不正に関する情報やシェアハウスを巡る苦情がそれ以前から寄せられていたという。しかし、不正は実際の検査で見つけ出すという「現場主義」の伝統があだとなり、事前情報を生かせなかった。
遠藤氏は「かつては現場に入れば見つかると考えて事前の情報の入手や分析がややおろそかで、内部で改革を進めていた。何が金融庁に欠けていたのかを精査し、スルガ銀がこれほどひどい状況になる前にどうすれば対応できたのか、改めて体制を構築していく」と語った。
不正流出問題が相次ぐ仮想通貨業界については、金融庁の規制が後手に回ったと指摘されるが、遠藤氏は「今は新しい技術が発展する過程の生みの苦しみだ。イノベーションを支えることと投資家を保護することのバランスを考え続ける。偏見は持たない」と述べ、引き続き業界の育成に努める考えを示した。(山口博敬、榊原謙)