貧困から子どもたちを救いたい――。大阪府門真市で、市民参加型の子どもの貧困対策が進んでいる。ボランティアの市民らが「見守り役」となり、寄せられた情報で行政が支援に動く全国でも珍しい仕組みだ。活動開始から10月で1年。家庭を公的支援につなげるケースも増えつつあり、別の自治体にも「門真モデル」が広がり始めている。
「その子が置かれた環境は、よく見ておく必要がある」「登校支援の継続で、子どもが次第に登校できるようになった」
9月上旬、門真市役所の一室で開かれた定例の「チーム会議」。元教員や市職員ら14人が集まった。地域の子どもの課題や、その対応策などを報告し合い、今後の活動方針を確認した。
困窮家庭の子どもの早期支援を目的に、市が昨年10月から始めた「子どもの未来応援ネットワーク事業」だ。元教員やスクールソーシャルワーカーらからなる「応援チーム」を役所内につくり、児童相談所や生活保護の関係部署などと連携して対応にあたっている。
事業の大きな特徴は、研修を受けた市民らが「見守り役」としてボランティアで参加していることだ。
同じ洗濯物が何日も干しっぱなし▽いつも同じ服装▽子どもだけで外食している――。断片的なシグナルとして市と市民が協力して作成した14のチェック項目「見守りシート」に基づき、不審に思えばボランティアが応援チームに連絡する。学校だけで子どもの実態をつかむことは難しく、地域全体で見守る必要がある、との考えから導入された。
取り組みの背景には、困窮家庭に必要な公的支援が行き届いていない実態がある。大阪府などの2016年の調査では、最も生活が苦しい所得層で、就学援助費の受給経験のない世帯や、児童扶養手当を受けたことがないひとり親世帯がいずれも1割以上いた。
門真市は約20人に1人が生活保護を受けている。その割合は府内で大阪市に次いで高いことから、府が門真市にモデル事業の実施を依頼した。
現在、ボランティアは目標だった600人を大きく上回る1074人が登録。市民全体のおよそ100人に1人にあたる。
市内で飲食店を経営する阪田百合子さん(48)は今春、ボランティアに登録した。元々、子どもの居場所づくりのため、子ども食堂や学習支援の活動も続けてきた。阪田さんは「地域からも孤立して困っている子が多いと思う。ささいなことでも相談できる場所があるのは安心感がある」と話す。また、市内の洋食店店主の中山文寛さん(46)も子ども食堂などの活動を続け、昨年11月にボランティア登録した。「地域のつながりが薄くなった時代だからこそ、こうした活動は大事だと思う。地域の再生にもつながる」
成果は着実に増えている。ボラ…