視覚障害者が交差点を渡りやすいように「交通信号機の色を音声で教える装置」を、茨城県鹿嶋市泉川の宮沢勝次さん(74)が考案した。視力に障害がある宮沢さんがふだんの生活で困ったことを改善しようと、工夫を重ねて装置を自作。企業や団体による実用化を期待している。
多くの交差点は、「ピヨピヨ」といった擬音やメロディーなどで、歩行者用信号が青になったことを音でも知らせる。宮沢さんが考案した装置は、信号機の色に合わせて「現在は青信号です。現在地は○○(地名)で、△△(建物名)の前です。車道の幅は何メートルです」と音声で知らせる。
道幅の情報により、交差点の大きさや広さが分かり、どのぐらいで渡りきることができるかなど、歩く際の判断に役立つ。赤信号で止まっている時には「渡ってから先の道案内をします」と告げ、「歩道の先を右に歩くと大型スーパーの○○店に行きます」など、建物や店名を具体的に伝えて道案内する。
宮沢さんは30年ほど前、網膜に病状が出て視力が低下。今はかすかに光を感じるぐらいという。外出時には付き添いが必要で、夜は外出しない。「音は聞こえても、どの方向に渡り始めればいいか分かりづらかった」と話す。初めての交差点や旅先だと擬音やメロディーが違うこともあり困ったことが、装置を思いついたきっかけだったという。
約5年かけ、交差点で人をセンサーで感知して案内を始める仕組みや、信号機の制御装置と連動して信号が青や赤になったことを伝える模擬装置を自作。歩行者の頭上から音が聞こえるよう、L字形のパイプを使った。今年6月、水戸市内であった低視力障害者向けの機器相談会で実演し、好評を博した。7月には特許庁に実用新案として申請したという。
宮沢さんは「装置を24時間稼働できれば、早朝でも安心して散歩できる。外出しやすい環境になる」と期待を込める。