岐阜刑務所(岐阜市)で、休暇中の常勤医師の名を無断で使い、看護師らが受刑者向けの薬の処方箋(せん)約1千枚を偽造していたことが17日、同刑務所への取材でわかった。偽造された処方箋で出された薬を服用した受刑者に健康被害は確認されていない。医師法は、処方箋を交付できるのは医師としており、看護師らの行為は医師法に抵触する恐れがあるという。
同刑務所によると、「矯正医官」と呼ばれる常勤の男性医師が2月13日~4月13日に休暇を取得。この間、刑務所に常勤の医師がいなくなり、看護師らが常勤医師らの名前で処方箋を作成したという。薬は受刑者がこれまでに処方されたものなどという。約530人の受刑者の大半に処方箋を出したとみられる。
同刑務所は4月に朝日新聞の取材で不正を把握したといい、「医官の不在中は非常勤医師が処方していると思っていた」としている。看護師らは刑務所の聞き取り調査に「常勤医師がいなくなり、薬を止めることで病状が悪化すると考え、やむを得ずやった」などと説明しているという。
高橋昌博所長は「本件事案が生じたことは誠に遺憾であるが、今後いっそう医療体制の構築、維持に努めたい」とコメントした。(吉川真布)