田んぼが広がる中、四角く剪定(せんてい)された松の木がそびえ立つ。屋根より高く、まるでついたてのようなそれは「築地松(ついじまつ)」。冬が近づくにつれ厳しさを増す北西の季節風から家屋敷を守ってくれる出雲地方独特の防風樹だ。
高さ10メートルを超すものが多く、樹齢はおおむね50~150年。出雲市建築住宅課によると、市内の約1450戸にあるという。昔から斐伊川の洪水に悩まされてきた人々は土を盛り基礎を高くした家を建てた。基礎を固めるために松を植えたのが始まりとされる。
同市斐川町の嘉藤由春さん(71)方には、きれいに角張った築地松を見ようと観光客が訪れる。「先祖代々からの松。この秋の台風で大風が吹いた時もこいつのおかげで瓦も飛ばなかった。ずっと守っていきたいね」と嘉藤さん。ただ近年は松食い虫の被害で減ってきている。防虫や数年に一度の剪定(せんてい)など維持には手間もかかる。(杉山高志)