日本で目にする機会はほぼない北朝鮮の絵画(朝鮮画)が、韓国の国際芸術祭に22点出品されている。メインは、北朝鮮の一線の画家が集団で描く「集体画」。まとまって紹介されることは珍しいため、韓国内でも注目を集めている。一体どんな絵なのだろうか。
「労働者たちは大変そうな仕事でも、みんな笑っています。そしてこういう絵には、必ずきれいな女性やカップルが描かれるのがお約束です」
アジア最古参の国際芸術祭の一つ「光州(カンジュ)ビエンナーレ」。朝鮮画が集められたメイン会場の一室で16日、スタッフによるガイドツアーに参加した。「集体画は、2~7人の団体で制作するのが特徴。大きい絵ですね」。大人の背丈以上ある大作を前にした説明に、参加者たちは深くうなずく。集体画は、労働者を写実的に表現する「社会主義リアリズム」として描かれることが多いという。
展示を企画した米国在住のキュレーター文凡綱(ムンボムガン)さんによると、集体画は北朝鮮の指導者級の人物の死去や、ダムなどの巨大インフラの完成、歴史的なできごとを記録する役割もあるという。出品画家はいずれも一線級で、少なくとも6人以上が北朝鮮のトップ芸術家に与えられる「人民芸術家」や、それに次ぐ「功勲芸術家」の称号を持っているという。
朝鮮画自体の展示は、中国などのほか、過去の光州ビエンナーレでもあった。だが、集体画は、北朝鮮のプロパガンダ(政治宣伝)と結びついている面もあり、韓国内でまとまった形で市民の目に触れることはほぼなかった。今回出品された集体画6点も、人物がかなりふっくらしていたり、過酷な労働を喜んで受け入れたりという現実とはかけ離れたような表現も見られる。
一方、22点の中には集体画とは違って、日常の瞬間を切り取った全く毛色が違う作品もある。
たとえば下地の白を効果的に使ったパステル調の作品「夕立」。主人公の女性が顔を上げ、雨があがるのを待つこの絵は一人の画家によって制作された。女性は未来を見つめているとされ、絵の中でほほえむもう一人の女性は作者の娘がモデルだという。それ以外にも、人物画が7点、水墨を使った文人画が3点、自然を表した山水画が4点、動物画が1点とバリエーションに富んでいる。水墨画以外はいずれも日本画と同じく、にかわで溶いた顔料でコウゾの紙に描かれる。
展示を見た大学教授、陳晟秀さ…