26日の日中首脳会談では、両国間の今後の経済協力の方向性が固まった。主な柱は、第三国協力▽イノベーション(技術革新)▽金融▽高齢化――の4分野だ。いずれも両国が補い合う関係にあり、安倍晋三首相が提唱する「競争から協調へ」という流れを象徴するものとなる。
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両国がそろって最大の成果に位置づけるのが、首脳会談と同時に開催された、双方の企業による第三国でのビジネス協力を推進する会議だ。金融やインフラ、エネルギーなどで日中の政府機関や企業により52本の協力覚書が締結された。
中国はシルクロード経済圏構想「一帯一路」を推し進め、外国でのインフラ整備を自国企業のビジネスに結びつけている。プロジェクト管理などで実績を持つ日本側が、中国側と共同で事業を手がければ、日本企業のビジネス機会を増やすことが狙える。会議では、日本側が求める事業の開放性などの条件に、中国側も同調する考えを示した。
こうした「第三国協力」に象徴されるのが、日中の経済関係の相対的な変化だ。中国経済が急成長するきっかけになった1978年の改革開放から40年。日本は中国に教える側から、中国と競争する立場になった。ただ、人口が減る日本は成長が難しくなり、中国も高い成長を維持できなくなるなか、競争よりも相互のよい点を補完し合う関係にこそ、よりメリットがあるという発想だ。
最先端分野でも協力する。今回、設立が決まった「イノベーション協力対話」は人工知能(AI)などの先端技術や、知的財産分野での協力を話し合う。AIについて、日本は高い技術を持つ一方、中国ではビジネスの現場での応用が進んでいる。日本の政財界は、中国側との対話を通じて、ビジネスを進める上で必要な知的財産保護なども促し、積極的な事業協力につなげる狙いだ。
金融分野でも不備な点を補完する。日中の中央銀行は2013年に失効した円と人民元との通貨スワップ(交換)協定を結んだ。相手国の通貨が不足した金融機関に対し、中央銀行を通じて通貨を供給。限度額は中国側が2千億元、日本側が3・4兆円で、日本が過去に結んだスワップ協定で最大規模だ。象徴的な意味合いも強いが、通貨不足時の備えになり、邦銀の中国進出や貸し出しの積極化を下支えできると見込む。
また、中国が金融分野の対外開放を徐々に進めるなかで、日中の証券市場が協力し、「日中証券市場フォーラム」を開くことも決まった。中国銀行東京支店が人民元決済を担う「クリアリング(決済)銀行」の役割を担うことになり、日本から中国への元建て投資が進むことが期待される。
一方、中国が確実に日本の後を追うとみられているのが高齢化だ。首脳会談では医療・介護分野での協力を進めることで一致した。中国は17年末現在、60歳以上が2億4千万人と、人口の18%を占め、今後急速に増えていく見込みで、高齢化で先行する日本の医療・介護サービスへの関心が高まっている。(福田直之=北京、斎藤徳彦)
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