「天国にいちばん近い島」として知られる南太平洋のニューカレドニアで11月4日、フランスからの独立の賛否を問う住民投票がある。
北部州の町ポヤを訪れると、沿道の旗が目に入ってきた。青、赤、緑のストライプを背景に黄色い円の中に伝統的な尖塔(せんとう)のシルエット。先住民カナクの旗だ。
独立派「カナク社会主義民族解放戦線」(FLNKS)の集会に足を運ぶと、地域のリーダーらが「我々がこの国を率いていく」と呼びかけていた。
配られた冊子「独立に向けたビジョン」には、国名「カナク・ニューカレドニア」、国旗はカナクの旗、世俗的な民主国家を目指す、などと書かれている。最前列に座るジュリエン・ゴウさん(57)は「独立に賛成。運動の成果だからだ」。
先住民の尊厳
19世紀にフランスが領有、ニッケル鉱を見つけるとカナクの土地を奪い入植を進めた。支配層の白人と伝統的な農漁業を営む先住民との格差は広がった。
第2次大戦後、周辺の島々が独立する中で、FLNKSが1984年に結成された。白人の果樹園の労働者だったゴウさんもポヤ中心部の道路を封鎖する抗議行動を繰り返した。「何も持っていなかった私たちは政治や経済の不平等に反対した」
88年に仏当局との衝突が先鋭化。事態収拾のため独立派と反独立派、仏政府が同年、独立の賛否を問う住民投票を10年後に実施することで合意。さらに98年に3者が結んだ協定は、投票を最大で2018年へ先送りし、議会の設置や、外交、司法など5分野を除く権限を現地の行政府に移譲する内容を盛り込んだ。
FLNKSの幹部、ダニエル・ゴアさんは7月、シドニーで講演し、「植民地主義の時代は終わる。独立を求めるのは、尊厳の問題だからだ」と語った。
北部州の中心の町コネのバスロータリーには、平日の昼間から若者が目立つ。ローラ・ポアウテタさん(21)は高校を卒業したが仕事がない。「今は欧州系の方が恵まれている」。友人のダイアナ・シンチャさん(21)がうなずいた。
失業率、貧困率とも、カナクの多い北部州などは高く、欧州系の多い南部州は低い。また昨年の全域の失業率は11・6%だが、15~29歳では25・2%。カナクの若者には、独立で現状が変わるとの期待がある。
仏領になって1世紀半余り。独立を求める先住民に対し、欧州系の多くは現状維持を望んでいる。
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