全国で約8万人の高校生が参加した大学入学共通テストの2回目の試行調査は11日、数学と理科が実施され、2日間の日程を終えた。1回目の試行調査で正答率が低く、無解答も多かった数学の記述式問題は解答方法がシンプルになり、「解答を記述させよう」という大学入試センターの工夫が目立った。
読む資料・問題文の字数減ったが…共通テストに残る課題
解きやすい?高校生に聞いた共通テスト 試行調査2回目
1回目の試行調査で数学の記述式問題は3問出されたが、正答率は2・0%~8・4%と低迷し、半数前後の答案では無解答だった。このため、入試センターは2回目では数式だけ、または短い文章で答える問題を出題した。
もっとも単純な問題では、「集合」に関する基本的な概念を、記号を使って記述させた。ほかには、学校の階段を題材に三角比と不等式で解答する問題と、三つの点が移動するにつれて三角形の面積がどのように変化するか、短い文章で答える問題が出された。
入試センターの大杉住子審議役は「前回のように、より思考力を問える出題をしたい部分はある。だが、答えてもらえなければ意味がない」と説明する。一方で、「数式を記述させる今回のような問題でも、力は問える。基礎的なレベルも含め、それぞれに思考力を問えるような作問をめざしている」と話した。(増谷文生)
現場からは「今回の問題なら対策できる」の声
東京都杉並区の明治大で数学の問題を受けた都立高校2年の男子生徒(17)は、慣れない記述式問題にとまどった。模試などではマークシート式の問題ばかりを受けてきたといい、「この書き方でいいんだよな、という不安があった」と話した。
「数学でも、読解力が問われているのかなと感じました」と話すのは、都立高校2年の女子生徒(16)。「問題文を読むだけでちょっと疲れた。センター試験形式の模試はすぐに計算にとりかかれるのに、計算を始めるまでに時間がかかった」と語った。
京都市上京区の同志社大で受験した京都府立高校2年の男子生徒は「数式を書く問題は難しかったが、まったく解答できない問題はなかった。ただ、マークシート問題を含めて文章がどれも長く、読み込むには時間が足りなかった。対策が必要だと思う」と話した。
首都圏の私立中高一貫校の数学教師(49)は「今回の問題なら対策できる」と話す。1回目の試行調査で出題された問題は、プロセスに目を向けることや、問題文を理解して数学に読み替えることなどを求める、高度な問題だと感じたが、今回は読み替えの難度が下がり、解きやすいという。
「対策しやすい方向に妥協したのだろう。50万人以上が受ける試験だから仕方ない」と理解を示しつつも、「50万人以上受ける試験だからこそ、勇気を持って入試改革にのぞまないと、高校の授業を変えるところまでは届かないだろう」と指摘した。(貞国聖子、円山史、波多野陽、宮坂麻子)