山の木を勝手に持ち去る「無断伐採」が各地に広がっている。伐採後の山林は荒れ、土砂崩れなど二次被害も起きている。明らかになっている被害は氷山の一角との指摘もあり、専門家は早急な対策が必要と訴える。
「もう再生不能や」
宮崎県国富町の山林で、所有者の男性(60)=宮崎市=は肩を落とした。
祖父母の代から家族で育ててきた約40アールのスギ林。9月上旬、半分ほどの約200本が勝手に切られ、丸太になって近くに積まれていた。
平日は仕事があり、山付近に行くのは月1回ほど。平地から見える範囲の木は残され、目隠しのようになっていた。斜面を削って新たに造られた林道には、重機のわだちが残っていた。
9月末には台風24号が山を襲った。再び訪れると、林道は山肌がむき出しになって崩れ、残っていた木も根ごと倒れた。一帯では土砂崩れが起き、農業用水のため池に流れ込んだ。
木は木材として切り時を迎えていた。「定年後にこの木で家を建てようと妻と楽しみにしていたのに……。あまりにもひどい」
無断伐採の被害は全国に広がっている。林野庁が3月にまとめた調査では、1月までの10カ月間に自治体に寄せられた「無断伐採」の相談件数は62件。九州・沖縄が33件と多く、関東9件、北海道・東北8件、中部5件と続く。
宮崎県では、被害の増加を受けて昨年9月、被害者らが「盗伐被害者の会」を設立した。現在80世帯ほどが被害を訴えている。
■「間違えて」主張す…