35年前の大韓航空機撃墜事件で犠牲になった岡井真さん(当時22)、葉子さん(同25)夫妻をしのぶ追悼コンサート(JINの会主催)が、真さんの母親が暮らす宮崎県国富町で開かれた。母仁子さん(82)は「息子たちの死を無駄にせず、少しでも世界の平和につながるように」と思いを語った。
冷戦下の1983年9月1日未明、ロシア・サハリン沖で、米ニューヨーク発韓国ソウル行きの大韓航空機が旧ソ連の戦闘機に撃墜され、日本人28人を含む乗員乗客269人が犠牲となった。ジャズギタリストを志していた真さんは、米ボストンのバークリー音楽大学を卒業。葉子さんと帰国する途中だった。
仁子さんは支援者らと5年に1度、東京や福岡、宮崎で追悼コンサートを開いてきた。仁子さんの提案がきっかけとなり、遺留品が流れ着いた北海道の稚内市や紋別市では鎮魂の「野焼き」も開かれた。陶芸家の仁子さんは野焼きの火で陶器を焼き、遺族の思いを作品で表現してきた。
5年前の脳出血で右半身にまひが残り、車いすでリハビリを続ける。体力的なこともあって、「今年が最後の鎮魂コンサートになるかもしれない」と憂う。
12日夜にあったコンサートには宮崎県や北海道から約150人が集まった。県内などで活動するジャズミュージシャン6人が登場。生前、真さんが作曲した7曲を演奏した。
宮崎で活動するギターの篠原一史さんは、真さんが愛用していた赤いギターで演奏。幕あいでは「真さんのこだわりがみられる、とてもきれいなギターです」「この曲にはファミリーという意味が込められているのではないでしょうか」と、真さんに思いをはせながら話した。
仁子さんは半身まひの影響でうまく口を動かせないが、「世界の多くの人と文化交流を続けていくことが、残された私にできる唯一の仕事と思っています」と言葉をかみしめるように、ゆっくりと来場者に語りかけた。(大山稜)