名探偵・金田一耕助ファンの「聖地」、岡山県倉敷市真備（まび）町地区で２４日、コスプレイベント「１０００人の金田一耕助」が開かれる。西日本豪雨で被災した地区を元気づけたいと、ファンたちの仮装は例年以上に思いがこもっている。

真備町地区は横溝正史（１９０２～８１）が戦中に疎開して戦後も暮らし、金田一シリーズを書き始めた場所で、金田一が初登場する「本陣殺人事件」の舞台でもある。毎年１１月、ファンが金田一や登場人物に扮して歩くイベントが開かれ、今年で１０回目となる。

東京都世田谷区の会社員高田満（みつる）さん（４６）は今年も妻の佐知子さん（４２）、長男景太くん（６）、次男樹（いつき）くん（２）の一家４人で参加する。満さんは高校時代に横溝作品に出会い、のめり込んだ。６年前にイベントに参加して以来、倉敷市内の写真館で金田一の着物姿の家族写真を撮ってもらうのが毎年の恒例だ。豪雨後に初めて真備町地区を訪れるが、「ずっと続くように応援したい」と話す。

堺市の会社員西美穂子さん（４９）は、小学生の時に古谷一行が金田一を演じたドラマを見てファンになった。初参加の４年前は恥ずかしく、簡単な小道具だけで臨んだが、周りの仮装に刺激を受けた。翌年から気合を入れた。

一昨年は横溝の「不死蝶（ちょう）」に登場する黒いベールをかぶった女に扮した。黒地の布に半年かけてチョウの刺繡（ししゅう）約１３０個を施し、注目を浴びた。今年も新作で挑む。「衣装は当日までのお楽しみ。真備の人に喜んでもらいたい」

岡山県浅口市の主婦逸見（へんみ）幸子さん（４６）は、息子の晃誠（こうせい）さん（１５）と参加し、映画「八つ墓村」の登場人物「井川鶴子」と「田治見要蔵」にそれぞれ扮する。

小学生の頃から横溝作品に親しむ幸子さんは「最初に読んだ時は怖くて、本を引き出しにしまって鍵をかけた。それでもまた読みたくなる」と魅力を語る。約７年前から参加し、今年はどの女優が鶴子を演じた時の衣装か、どのシーンか、マニアだけが分かる小道具も作り込んだ。「毎年ファンが集まるのは、真備の人たちが温かく迎えてくれるから。笑顔で臨みたい」

一方、地元の「岡田地区まちづくり推進協議会」は、コスプレの一行が練り歩く道中、横溝作品にちなむ恒例の寸劇で歓迎する。

「本陣殺人事件」の三本指の男…