教員の長時間勤務が問題となるなか、相模原市教育委員会は、教員の勤務時間に上限を設定する方向で検討を始めた。市教委は教員の働き方の改善を進めているが、学校現場を対象に意識調査をしたところ、長時間勤務に対する意識が「変わった」と答えた割合が2%未満だったのに対し、「変わっていない」は16%。長時間勤務が続く実態が浮かんだ。市教委は「勤務状況にあった上限設定をしたい」としている。
市教委は3月、「学校現場における業務改善に向けた取組方針」を策定した。仕事環境を改善して、児童生徒と向き合う時間を確保することを目指している。
方針策定を受けて、市教委は7~8月末に市立小学校72校、中学校37校のすべての校長に対して意識調査を実施。全校長から回答を得た。「長時間勤務に対する意識が変化したか」との質問に、「変わった」と答えたのは1・8%。「少し変わった」は44・1%、「変わりつつある」は37・6%、「変わっていない」は16・5%だった。
「変わっていない」とする理由は、「勤務時間内にできる業務量ではない」「子どもに関わること以外の仕事が多い」など。「変わりつつある」とした校長の回答にも、「改善しようと思っているが、業務量が変わらない」「長年身についている」「物理的に無理という考えが根強くある」との声があった。
一方で「変わった」と答えた学校の取り組みを尋ねると、会議時間の厳守や内容・回数の見直し、月に2回のノー残業デーの実施などが挙がった。市教委は今年度から、授業準備やプリント印刷などに携わる「スクールサポートスタッフ」を小学校9校、中学校3校に各1人配置。これで教員の負担が「減った」との回答が64%にのぼった。
調査結果を踏まえ、「教員の業務量を減らす必要がある」と市教委。学校側に業務改善や意識改革を求めるとともに、学校と市教委が連携して取り組む必要があるとしている。今後、市内で統一した教員の勤務時間の上限設定▽学校現場の全教職員の役割分担の明確化▽部活動指導員の配置▽スクールサポートスタッフの増員――を検討する。
勤務時間の上限設定について、市教委教育総務室は「教員の時間外勤務には、どこかでキャップをはめないといけない。実態をつかんだうえで、どの程度、勤務時間を圧縮するのか考えていきたい」とする。野村謙一教育長は「教員の働き方改革はとても重要。学校全体の取り組みが大切で、研修などでも意識を高めていきたい」と話している。(石平道典)