国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁が来日し、東京都内で27日、朝日新聞の取材に応じた。貧困や格差などの解消のために国連が取り組む「持続可能な開発目標」(SDGs)について、経団連と連携のための覚書を締結したことを明らかにした上で、「日本経済界の力や革新性をほかの国でも活用して、SDGs達成につながる投資が進むよう協力していきたい」と語った。
SDGsは、貧困撲滅やジェンダーの平等など、17の目標を2030年までに世界で達成しようというもの。UNDPは26日、その実現にむけて、大手企業が加盟する経団連と覚書を締結した。経団連側は今後、加盟企業の技術や経験をSDGs達成のためにどこでどう生かせるかUNDPと協力してマッチングをしたり、UNDPが関わる海外プロジェクトを視察したりしていくという。
シュタイナー氏は「単なる企業の社会貢献という話よりは、気候変動や人口の大量移動、自然災害が当たり前のこれからの時代にビジネスをどう進めるのかを考える上で、協力していきたい」と狙いを述べた。
日本企業に期待する具体例として挙げたのが保険業。「大手企業は途上国の保険市場にこれまで参入しようとしてこなかった。そうした国々の人々が保険に入り健康に関する危機的状況がなくなれば、その国の貧困問題が解決する可能性がある。保険企業にもチャンスだ。そうした新しいマーケットをどう作り出せるか、業界や各国政府と一緒に協力したい」と語った。
UNDPは、日本で来年開催され、SDGsにも深く関係する「第7回アフリカ開発会議」(TICAD7)の共催機関でもある。民間企業への期待については、「南アフリカを除いたサハラ砂漠以南のアフリカの国々で活動する日本企業の数は、ミャンマーにおけるそれと同じ。日本企業のアフリカへの関与は、それが秘める可能性に見合っていない」「アフリカには発展が止まった状態の国がある一方で、ガーナやボツワナ、ケニアのように開発や投資が進んでいる国もある。革新な事例もあり、それらはアフリカの可能性を図る指標。もっと知ってほしい」と述べた。(古谷祐伸)