酒気帯び運転で2人をひいて逃げたとして、道路交通法違反などの罪に問われた「モーニング娘。」元メンバー・吉澤ひとみ被告(33)の初公判が29日、東京地裁であった。吉澤被告は起訴内容を認め、「被害者の方に本当に申し訳なく思っております」と謝罪した。検察側は懲役2年を求刑し、弁護側は執行猶予を求めて即日結審した。判決は30日に言い渡される。
起訴状によると、吉澤被告は9月6日午前7時ごろ、酒気帯び状態で乗用車を運転。赤信号だった東京都中野区の交差点を時速86キロで突っ切り、自転車の女性と衝突したほか、はね飛ばされた自転車が当たった歩行者の男性も転倒させ、そのまま逃げたとされる。2人は5~10日の打撲や切り傷を負ったという。
グレーのスーツ姿で出廷した吉澤被告は冒頭、裁判官から起訴内容に間違いがないかと問われ、小さな声で「はい」と答えた。
冒頭陳述で検察側は、吉澤被告が事故前日の5日午後8時15分ごろから6日午前0時ごろまで、自宅で缶チューハイ3本と、炭酸水で割った焼酎2杯を飲んだと指摘。午前1時ごろに寝て午前6時ごろに起き、仕事に行くため、午前6時50分ごろから運転を始めたと述べた。また、吉澤被告が事故の15分後に110番通報して現場に戻り、午前9時50分ごろに行った飲酒検知では、呼気1リットル中0・58ミリグラムのアルコールが出たことも明らかにした。
証拠の内容が一つずつ説明される間、吉澤被告は、じっと前の方を見つめていた。ただ、所属していた芸能事務所の代表者が「人生の先輩、友人として今後も見守る」とつづった嘆願書を弁護人が読み上げると、すすり泣いた。
被告人質問では、逃げた理由を弁護人から問われ、「気が動転してパニック状態になったから」と説明。事件への認識を問う裁判官の質問には「社会人として、1人の人間として、考えの甘さ、気の緩みがあった」と答えた。さらに被害者への謝罪の言葉を繰り返し、「起こしてしまったことを、一生忘れずに過ごしていきたい」と語った。
検察側は論告求刑で「危険性の高い行為で、刑事責任は重く、悪質だ」と批判した。一方、弁護側は最終弁論で、「真摯(しんし)に反省し、メディアで大々的に報じられ、すでに十分な社会的制裁を受けている」と主張。夫や母親が監督を約束していることも挙げ、情状酌量を求めた。
この日は20席の傍聴席を求めて1137人が並んだ。