今年のノーベル平和賞の受賞者であるイラクの少数派ヤジディ教徒のナディア・ムラドさん(25)とアフリカ中部のコンゴ民主共和国で性暴力被害者に寄り添ってきた婦人科医のデニ・ムクウェゲさん(63)が9日、翌日の授賞式を前にノルウェーの首都オスロで記者会見した。2人は「今も多くの女性が性暴力の被害に苦しんでいる」と話し、国際社会に更なる行動を求めた。
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緊張した表情で会見に臨んだムラドさんは、受賞について「暴力で傷ついたすべてのヤジディ教徒にとって大きな日だ。この賞を(被害者救済への)扉を開けるものにしたい」と述べた。
一方、多くの女性がいまだに元の生活に戻れないことや、3千人以上が過激派組織「イスラム国」(IS)に連れ去られて行方不明になっていることに言及。「(国際社会の)努力により進展もあるが、多くのことが残されている」と述べ、「(ISの)誰一人として法の下で裁かれていない。このままではいつかまた同じことが起きる」と訴えた。
ムラドさんは2014年8月、ISに拉致され、「性奴隷」として人身売買された。3カ月後、ISが最重要拠点としていたイラク北部のモスルから脱出。15年にドイツに渡り、性暴力被害の実態を実名で証言してきた。
イラクでは約36万人のヤジディ教徒が避難生活を強いられている。ムラドさんは「イラク政府からは数年間、何の助けもない。すべての人に人権が与えられることを望む」と述べ、政府に早急な対応を求めた。
ムクウェゲさんは「紛争下での性暴力を非難するだけではなく、我々も市民も国際社会もメディアも、撲滅に向けて行動を起こす時だ」と訴えた。
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