ロシアの著名な人権活動家で、ノーベル平和賞の候補にもなったリュドミラ・アレクセーエワさんが8日、モスクワ市内の病院で死去した。91歳だった。インタファクス通信などによると、数週間前から体調を崩し、入院していたという。
ソ連時代の1927年に現在のウクライナのクリミア半島で生まれた。モスクワ大学を卒業後、60年代から人権擁護活動に関わり始めた。
75年、ソ連を含む欧州諸国など35カ国が、欧州の安定や基本的人権の尊重などをうたう「ヘルシンキ宣言」に調印すると、76年、前年にノーベル平和賞を受賞したソ連の物理学者サハロフ氏などと人権団体「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」を設立。ソ連での人権抑圧の監視にあたった。
77年、当局の弾圧を受け米国に亡命。93年に帰国するまで国外からソ連の人権状況改善を訴えた。帰国後も同グループの代表として活動も続け、ロシアによるウクライナ・クリミア半島の一方的な併合や野党指導者に対する弾圧などを非難した。
2009年、人権活動で功績のあった人をたたえる欧州人権委員会のサハロフ賞を受賞。ノーベル平和賞の候補にも名前が挙がっていた。
ロシアのペスコフ大統領報道官は8日、プーチン大統領が「アレクセーエワ氏がロシアの市民社会の形成に大きく貢献したことを高く評価している」とし、遺族に弔電を送ったことを明らかにした。(モスクワ=石橋亮介)