認知症などで判断能力が十分ではない人を支援する成年後見制度は、介護保険と並び超高齢社会を支える「車の両輪」として動き出した。この仕組みの利用を促す自治体の取り組みに格差が生じていることが、朝日新聞の主要105自治体アンケートでわかった。独居など身寄りがない人が制度につながるルートとなる市区町村長申し立ての数は、同じ指定市間、23区内でも大きな開きがあった。支援の軸となる機関の設置は、約半数が「未定」の状況だ。
成年後見取り組み、自治体で差 支援機関設置、半数未定
500万人を超すと言われる認知症高齢者に対し、成年後見の利用は約21万人(2017年12月)と伸び悩む。「制度が難しく相談先がわからない」「見知らぬ専門家が後見人になる」などの理由で敬遠されているのが一因だ。そこで成年後見制度利用促進法が16年に施行された。
朝日新聞は7~8月、主要105自治体(政令指定市・東京23区・中核市・県庁所在市)にアンケートを実施。利用促進のカギと位置づけられる「中核機関」と、利用を申し立てる家族がいない場合の安全網となる「市区町村長申し立て」について尋ねた。
中核機関は利用相談の窓口となり、家庭裁判所をはじめ、医療福祉関係者、法律家らと連携して本人や家族を支援する。後見人候補の調整(マッチング)も期待される。国の基本計画(17~21年度)では、自治体が設置することとなっている。ただ努力目標なので、未設置でも法令違反にはならない。
この中核機関は17市区(16・2%)が「設置済み」とし、「今後設置する予定」が34市区(32・4%)あった。しかし、最も多かったのは「現時点では未定」の49市区(46・7%)で、全体的に後ろ向きの姿勢が目立った。
経済的に苦しい高齢者に申し立て費用や後見人への報酬を補助する助成制度にも自治体による違いがあった。対象を「市区町村長申し立て」の人に限定し、本人や家族による申し立てでは助成されない自治体が3割以上あった。
市区長による申し立て件数(17年度)には、実数で年間1件から309件まで開きがあった。高齢者1万人あたりの件数に直して比べると、最も多かった東京都墨田区の年11・5件に対し、最も少なかった長崎市、大分市では0・2件にとどまった。指定市間でも、岡山市の6・4件から浜松市、札幌市の0・6件まで差が生じていた。東京23区が上位に目立つが中央区は0・4件と少なく、23区内でも開きがあった。
中核機関の設置や市区町村長申し立てなどの自治体別の状況は明らかになっていなかった。厚生労働省は11月から、全市区町村を対象にした初の実態調査に乗り出している。(中村靖三郎、高橋健次郎、編集委員・清川卓史編集委員・清川卓史)
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〈中核機関〉 成年後見制度の利用を促すために必要とされる、様々な関係団体の地域ネットワークの中核を担う機関。家庭裁判所をはじめ、弁護士会などの専門職団体、医療福祉関係団体などと連携し、相談対応や後見人候補の調整といった役割を果たす。国の基本計画では、市区町村が直営か委託で運営することが求められている。
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