名品を所蔵して評価し、味わってもらう。そんな静かな美術館像とは全く違う姿が、相次いで来日した欧米の近現代美術館の館長によって示された。特に、トランプ政権下で社会の分断が進む米国と、EU離脱を目前にした英国の館長からは、「公共」を強く意識した発言が飛び出した。
「いま、米国の状況は非常に難しい。政治的にも分断しています。その中で我々は、何が重要なのかを表現したい」と切り出したのは先月、東京の森美術館主催の討論会「拡張する現代美術と変わる美術館」に登壇した、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のグレン・ラウリィ館長だ。
トランプ大統領が、就任直後の2017年1月、アフリカ・中東の7カ国の国民の入国を一時禁ずる大統領令を出した際、私立財団が運営するMoMAでは、イラク出身の建築家ザハ・ハディドら、入国禁止になった国の出身者の作品を展示した。
「現代美術は、表現の自由、人…