インドネシア中部で22日夜に起きた津波で、同国の国家防災庁は24日、死者は計373人に上ると発表した。負傷者は1459人で、行方不明者も128人いる。犠牲者の大半が水死で、逃げ遅れが原因とみられている。大きな地震がないまま起きた津波に住民らはなすすべがなく、警報システムの不備が被害を拡大させたとの見方が強まっている。
被害が大きかったジャワ島西部に加え、対岸のスマトラ島でも被害が広がった。南部ワイムリティムールを24日、記者が訪ねると、海沿いの大半の家が倒壊していた。この村では住民18人が死亡し、20人が行方不明だ。
突然襲った津波の猛威を住民が振り返った。アイェム・ムリナさん(36)は物音を聞いてドアを開けると、高さ3・5メートルの天井まで水が一気に流れ込んできた。「5歳の息子を抱きしめたまま水中で耐えた」。家は壊れ、家財道具も全て失い、頭に傷を負った。だが、「家族全員の命が助かったことがありがたい」と話した。
地鳴りのような音を聞いたメイディ・ディヤンサさん(23)は大波が来るのが見え、自宅から裏山へ逃れた。だが、寝室で眠っていた4歳のおいが流され、遺体で見つかった。「何もできなかったことが悔しい。せめて警報があれば、起きて逃げられていたかもしれないのに」と涙ぐんだ。兄も意識不明の重体のままだ。
一方、ジョコ大統領は24日、ジャワ島西部バンテン州チャリタの被災現場を訪れ、「津波はいつもなら、地震が前触れであるものだ。今回は予兆もなく、住民らが避難できなかった」と報道陣に語った。
国家防災庁によると、スンダ海峡にある火山島アナククラカタウの噴火に伴う海底の地滑りが津波の原因とされる。噴火から沿岸部を津波が襲うまで、約30分の時間差はあったが、住民らの避難にはつなげられなかった。
同州の浜辺の自宅で津波に襲わ…