85歳の誕生日を迎えた天皇陛下。国民に寄り添う象徴天皇として、将来を担う子どもたちにも思いを寄せてきました。
「皇太子さまと美智子さん お二人の願い “お祝い品を頂くより 子供の施設でも”」。1959年3月24日付の朝日新聞の社会面。結婚前の天皇、皇后両陛下が、全国から寄せられるお祝い金の使い道として、子どもたちのために何かできないかと話し合ったことが紹介されました。記事によると「お二人は『結婚準備の費用を節約して、なにか貧しい人のためにしてあげられたらいいけど』とよく話されていた」。そして、お二人に寄せられた手紙には貧しさを訴えるものもあり、相談した結果、「子供のためになる施設がいいのではないか」と意見が一致したと記されています。
この思いが形になったのが、横浜市と東京都町田市にまたがる「こどもの国」です。約100ヘクタールの敷地にはコナラやクヌギの雑木林が広がり、家族連れらの憩いの場として知られます。
両陛下が初めてこどもの国を訪れたのは、着工間もない62年4月30日。小型四輪駆動車で施設内を視察し、自然環境の美しさに「思ったより立派なものになりそうだ」と喜び、「牧場をつくってはどうか」「子供のための図書館がつくれるのでは」「幼児のためにお砂場が欲しいですね」などと提案したそうです。
これとは別の機会に、関係者が陛下に説明に上がった際、シラカバを植えて北海道のような風景にしたいと伝えると、陛下は「シラカバは虫がつきます。特に鉄砲虫が。牛の堆肥(たいひ)をやればいいでしょう」と助言し、「スモッグのない、空気のきれいなこどもの国を作ってください」と希望しました。
こどもの国が開園した65年5月5日。開園式で、天皇陛下は「わたくしどもが、かねて夢にえがいていた『こどもの国』が、みなさんがたのご協力によって、いよいよここに開園をむかえたことは、まことに喜ばしいことであります」「日本をますます栄えさせるためには、わたくしどもは、つねに一歩先を見ていなければならないと思います。ことに、次の時代を担うこどもたちの幸せを守り、すこやかに育てることが大切なことでありましょう」とあいさつしました。
3人のお子さま方も学習院幼稚…