昨年11月22日夕、東京・有楽町の映画館。8割ほど埋まった客席からすすり泣きする声が漏れていた。
感情が政権と一体化、近代に失敗しすぎた日本 大塚英志
「4回泣けます」――。そんなコピーをポスターなどでうたった「コーヒーが冷めないうちに」の上映中のこと。9月末に封切られ、興行収入15億円に迫るヒットを記録した。
川口俊和の同名小説を有村架純主演で映画化した本作は、過去に後悔をもつ人たちが、望む時間に戻れる座席がある喫茶店を訪れ、人生を見つめ直す四つの物語を描く。公開直後から、SNS上には「泣きすぎて目が痛い」「涙腺が崩壊」などの言葉があふれた。
劇場に来ていた50代の女性は「仕事帰りにふらっと入ったけど、人間の温かさのあるいい映画でした」という。都内のアパレル店に勤める女性(27)は「2回見たし、やっぱり同じところで泣いた。スッキリするために映画に行くのは『涙活(るいかつ)』。普段から、泣ける、感動するような分かりやすい映画しか見る気がしない」という。
配給した東宝の宣伝担当者は「…