文化芸術の様々なジャンルで感動をうたう作品が目立ち、SNS上には自身の感動体験を多くの人と共有しようとする書き込みがあふれる。その背景には、どんな心理があるのだろうか。著書『感性は感動しない――美術の見方、批評の作法』(世界思想社、2018年)で、芸術作品を見ることを「誰にも肩代わりができない、あなただけの体験」と語る、美術批評家の椹木野衣(さわらぎのい)さんに聞いた。 「涙のラスト」まで5分 感動のコスパ志向、市場動かす 絵に感動した体験ない ――『感性は感動しない』で、芸術によって気持ちが揺り動かされる現象を「感動」という言葉でひとくくりにすることを疑問視しています。 「僕自身は絵を見て『感動』した体験はありません。どちらかというと感動は物語寄りの存在だと思います。でも、絵はあくまで『モノ』であり、固定した構図。そこに物語はないからです。そこで、感動してもらうために作品の裏に隠された歴史の激動や、作者の苦境といったドラマを付け加える。最近の展覧会は、そういう傾向にある気がします。例えばオーディオガイドは有名人や作者自身が語りかけ、感情に訴える要素が強い。そうすると絵を見ているようで、実は聞くことの方が主になっていく。以前は、なかったことだと思います」 ――どんな背景があるのでしょうか。 「経済的なメカニズムの変化が… |
歯止め利く「感動」が商品化、栄養剤に近い 椹木野衣
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