日本が抱える課題に対し、私たちは何ができるか。近代政治思想史が専門の中島岳志・東京工業大教授(43)に聞いた。
この30年間を振り返ると、日本にとって1990年代が大きな転換期でした。バブル経済崩壊や阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件があり、「日本は経済成長がずっと続き、かつ安全だ」という戦後の「神話」が壊れたためです。
続いて、2001年に誕生した小泉政権により、労働現場で安心感が失われました。終身雇用は当たり前ではなくなり、非正規雇用が急増しました。人口減少や少子高齢化にも妙手は見つけられていません。11年の東日本大震災と福島第一原発事故で、社会はますます不安に包まれています。
先行きの見えない時代に人々が望む政治家に、私が「断言型」と呼ぶタイプがいます。あやふやなことは言わずに「断言」する。論争のある政策でも、反対者を罵倒して「決定」する。国民は「断言」や「決定」が「正解」だと考えて安心してしまう。
安倍政権は「決められる政治」…