テヘランのスーパーの陳列棚には、「消臭元」などの日本製品がたくさん並べられていた=2018年12月、杉崎慎弥撮影
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米国のトランプ政権がイランの核合意から離脱したことに伴って再開した経済制裁が、イラン人の生活に大きな打撃を与えている。イランの国家歳入の約6割を占める原油取引も制裁対象になっており、現地通貨リアルは大幅に下落。市中のスーパーでは食料品などの価格が4割以上も値上がりした。影響は、イランで人気だったあの「日本製品」にも及んでいる。
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米国は昨年5月に核合意から離脱し、8、11月と2回にわたり、国連とは別の独自制裁を再開。対象品目を拡大してきた。制裁は、イランと取引した第三国企業を、米金融市場から締め出すなどの内容で、「二次的制裁」と呼ばれる。
関係者によると、世界最大規模の物流企業、郵便事業会社ドイツポストDHLグループなどは制裁を理由に、イランでのサービスを一時的に停止した。世界各地で救急搬送や医療通訳などを提供する医療アシスタンスサービス(本社・英国)もイラン国内での業務を終了。核合意後にイランに進出した日系企業も、拠点をアラブ首長国連邦のドバイに移すなど対応を迫られている。
買い物客でにぎわうテヘランのバザール=2018年12月、杉崎慎弥撮影
姿消す外国製品
イランには、政府が輸出入の決済に使う公定レートと、市中の闇両替商などで使われる実勢レートの2種類がある。現地の人々が日常生活で意識するのは、圧倒的に実勢レートの方だ。現地通貨リアルは、米国が核合意を離脱した昨年5月以降、下落の一途で、昨年1月に約4万3千リアルだった対ドル相場が一時、15万リアルを超えてしまった。リアルの価値が、4分の1近くに下がった計算になる。
私が赴任した2017年4月当…