東京電力福島第一原発事故直前から運転を停止していた九州電力の玄海原発2号機(佐賀県玄海町、55万9千キロワット)について、廃炉が濃厚な情勢になっていることがわかった。2021年3月に運転期限を迎えるが、運転を延長するには巨額の安全対策費用がかかる。一方で電力需要は減っており、採算がとれるか不透明な状況のため。
九電幹部は15日、朝日新聞の取材に「(運転延長の試算などの)検討状況が厳しいのは確かだ」と語った。別の幹部は「早く判断することに越したことはない。議論はだいぶ煮詰まって来ているが、まだ決められるほどではない」と話している。年内に最終的に決断する見通し。玄海2号機と同じ敷地内にあり、同規模の玄海1号機はすでに廃炉作業に入っている。
玄海2号機は1981年3月に運転を始めた。福島の事故直前の2011年1月、定期検査のために発電を停止。法律で決まった40年の運転期限を迎える原発は原子力規制委員会の審査を経て、一度だけ運転を20年延長できる。延長する場合は運転期限の1年前までに規制委に申請をする必要がある。九電は遅くとも2020年3月には結論を出さなくてはならない。
玄海2号機の出力は55万9千キロワットで小規模だ。それでも運転を延長する場合、安全対策には2千億円規模がかかるとみられる。九電は3兆円を超える有利子負債を抱える。
一方、九電の昨年度の販売電力量は10年度に比べ約1割減った。企業の節電などが進んでいるためだ。逆に、電力供給力は高まっている。昨夏までに玄海3、4号機(計236万キロワット)が再稼働し、今年中に100万キロワットの石炭火力、松浦発電所2号機(長崎県松浦市)が稼働する。巨額投資をして玄海2号機を再稼働させるメリットが見えにくい状況だ。
福島の事故時、国内には54基の原発があった。その後に廃炉や廃炉方針が決まった原発は計20基。九電も15年に玄海1号機の廃炉を決めた。(山下裕志、高橋尚之)