長野県軽井沢町で起きたスキーツアーのバス事故から15日で3年。前日となった14日、事故現場に建てられた「祈りの碑」には、犠牲者の遺族や友人、関係者らが次々と訪れ、祈りを捧げた。「僕たちは精いっぱい生きていくしかない」。友人のひとりは犠牲者を悼みながら、そう誓った。(大野択生、田中奏子、土屋弘)
事故で亡くなった首都大学東京2年の田原寛さん(当時19)とともにバスに乗り、自身も負傷した友人の男性4人も花束を持って碑を訪れ、手を合わせた。
うち1人の男性(23)は腰と腕の骨が折れる重傷を負った。昨年、大学を卒業。今は交通安全などに関わる仕事に励む。「事故の風化を防ぎたいし、新たな被害者も出したくないと思いながら仕事をしています」。碑に刻まれた犠牲者の名前と年齢に、「一番楽しい時間を過ごせる時期だったのに」と悔しさをにじませ、「(田原さんとは)仕事のことなど、いろんな話をしたかった」と語った。
田原さんと大学で同級生だった女性(23)はバスが転落した崖下を見つめ、目頭を押さえた。「寛が19歳で亡くなって、私たちは23歳になって……。うまく言えないけど、何年経っても苦しい」と言葉を詰まらせた。
事故で亡くなった法政大4年の花岡磨由(まゆ)さん(当時22)の高校時代の同級生で、ともに都内の片岡亮さん(25)と金子魁臣(かいと)さん(25)も献花した。2人は「(花岡さんは)ムードメーカーで、クラスの中心的な存在だった」と振り返り、金子さんは「花岡さんのことは忘れない」。片岡さんは「彼女のためにも、僕たちは精いっぱい生きていくしかない。国は再発防止に取り組んでほしい」と話した。
法政大のゼミの教え子4人を亡くした教育評論家の尾木直樹さん(72)も現場を訪れ、碑に四つの花束を手向けた。「(バス事故で)けがをした学生たちの近況を報告し、二度とこういう事件が起きないよう頑張ると誓いました」
尾木さんは12日に4人の墓参りをし、遺族らとも面談。13日にはけがをした教え子らと都内で会い、近況などを聞いたという。
「けがをした学生たちもみな就職し、仕事の経験や実績を積む中で、着実に歩み始めている。一方、子どもを亡くした親の中には自分を責めている方もいる。3年でそのギャップが広がっており、絶対に命を失ってはダメだという思いを強くしている」と話した。
尾木さんは慰霊の後、軽井沢高…