韓国の元慰安婦で、2015年の日韓慰安婦合意に反対する「象徴的存在」とされてきた金福童(キムボクトン)さん(92)が28日夜、ソウルの病院で死去した。支援団体が公表した。韓国女性家族省によると、元慰安婦の生存者は23人になった。
支援団体「正義記憶連帯」によると、金さんは日本統治下の朝鮮半島で生まれ、旧日本軍の慰安婦として中国や東南アジアの戦場を転々とさせられたという。92年に元慰安婦だと実名を明かして名乗り出て、日本を含む世界各地で体験を語り、戦時の女性に対する性暴力の根絶を訴えた。
慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決をうたう日韓合意を厳しく批判し、合意に基づく「和解・癒やし財団」の解散や安倍晋三首相による直接謝罪を求めて「1人デモ」などを展開。日韓合意に否定的な意見が多数を占める韓国世論の形成に影響を与えた。
文在寅(ムンジェイン)大統領はフェイスブックに追悼文を記し、「被害者にとどまらず日帝の蛮行に謝罪と法的賠償を要求し、歴史を正しく立て直す先頭に立った」とたたえた。(ソウル=武田肇)