京都市の繁華街、先斗町(ぽんとちょう)で半世紀以上続いた食事処(どころ)「山とみ」が、31日で店を閉じる。大正時代に創業したお茶屋を、お好み焼きや串カツを気軽に食べられる店にして55年。多くの文化人や役者に愛されてきた。
のれんをくぐると、おでん鍋の湯気の向こうにおかみの柴田京子さん(76)の笑顔が見える。昨年末からなじみの客に店をたたむと手紙で伝え始めると、閉店を惜しむ常連客らで連日にぎわうようになった。
開店は東京五輪があった1964年。その半世紀前に祖母が始め、母が後を継いでいたお茶屋を、柴田さんの希望で食事処に変えた。当時21歳。家には多額の借金があった。
「一見(いちげん)さんお断り」でなく、気軽に寄ってもらえる店にしたかった。両親はおにぎりやお茶づけ、柴田さんと妹はお好み焼きや串カツをつくった。高度経済成長の波にも乗り、店は繁盛した。今は娘の志村有美さん(49)と息子の浩明さん(46)が店を支える。
名物は鉄ピン揚げ。油の入った…