岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」で2017年夏、入所していた高齢者5人が相次いで死傷した事件で、元職員の小鳥(おどり)剛容疑者(33)=傷害容疑で逮捕=が暴行を加えたとされる入所者の女性(当時91)の介護を一対一で行っていたことが、捜査関係者などへの取材でわかった。県警は、小鳥容疑者が同僚職員の目が届かないときを見計らって、入所者に暴行を加えていた可能性があるとみている。
捜査関係者らによると、女性に異変があった17年8月15日、小鳥容疑者はこの女性を担当する職員チームの一員として、一対一で介護をしていた。同日午後2時10分ごろ、女性に両胸の肋骨(ろっこつ)を折るなどの暴行を加え、約2カ月の重傷を負わせた疑いがある。女性は病院に運ばれたが、自宅療養中の10月に老衰で死亡した。
当時、女性は施設2階の4人部屋で生活していた。このフロアは認知症専門棟で、日中は職員10人ほどが勤務。入所者のおむつ交換や食事の世話をしたり、交代で休憩をしたりしている。介護は入所者と職員が一対一で行うことが多かったという。
死傷した5人は、いずれも小鳥容疑者が介護にかかわり、うち4人は認知症専門棟の2階で生活。認知症の入所者がいるため、このフロアではエレベーターを利用する際に暗証番号の入力が必要で、非常階段の出入り口も施錠されていた。職員以外の人の出入りが制限されているという。
一方、小鳥容疑者は入所者5人が相次いで死傷し、施設を退職した。その後、自身のブログに、事件への自らの関与を否定する文章を掲載していた。
◇
4日午後8時半すぎ、小鳥容疑者が勤める名古屋市内の建築資材販売会社の事務所に、岐阜県警の捜査員が家宅捜索に入った。