日本政府の途上国援助(ODA)で拡張工事が進むアフリカ・ケニア南東部のモンバサ港について、複数の地元紙が「中国からの債務の担保とされている可能性がある」と報じた。日本政府も情報収集に乗り出した。現地では中国による融資の拡大や不透明な債務状況に懸念の声が上がっている。
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ケニアでは中国輸出入銀行から約3200億ケニアシリング(1ケニアシリング=約1円)の融資を受け、モンバサと首都ナイロビを結ぶ鉄道が建設され、2017年に開業した。だが、この事業に関し、ケニアのデイリー・ネーション紙などは昨年12月~今年1月、返済が滞った場合、モンバサ港の運営権を含む国内インフラを担保にするという趣旨の契約を結んでいたと報じた。契約は14年で、中国側の承諾なしに内容を開示できないと定められているという。
同港は東アフリカ最大規模で、ウガンダやルワンダなど周辺内陸国への物流拠点でもある。同港のコンテナ貨物量は過去15年で4倍に増えている。
日本は07年以降、同港の開発事業に約590億円を上限に円借款を供与し、コンテナターミナルなどを整備してきた。13年のアフリカ開発会議(TICAD5)で、モンバサと周辺国を結ぶ「北部回廊」の支援を唱え、開発計画を作成。アフリカ支援の目玉プロジェクトと位置づける。日本政府によると、これまでのところ、日本の円借款に対するケニア側の返済は滞っていないという。
ケニア、中国両政府は昨年12月、同港が担保との報道について否定した。だが、ケニア経済問題研究所のクワメ・オウィノ氏は「ケニアと中国側の契約内容はほとんど開示されておらず、債務の実態も不透明なままだ」と疑う。
ケニアの日本大使館と国際協力機構(JICA)ケニア事務所は朝日新聞の取材に「ケニア政府から報道を否定する回答を得たが、事態を注視している」としている。
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