障害のあるアーティストが描いた絵を、プロのグラフィックデザイナーが、コーヒーなどを飲む時に使うタンブラーの図柄に仕立てた。個性あふれる151種類ができあがり、東京・六本木の東京ミッドタウンで3月10日まで展示販売している。収益はパラアスリートの支援にあてられる。
障害があるアスリートとアーティストの双方を応援しようと、日本グラフィックデザイナー協会が企画。デザイナー151人が無償で参加した。障害者のアーティスト活動を支援する組織「エイブルアート・カンパニー」が管理する、約1万2千点の作品データベースから絵を選択。文字を重ねたりモチーフを並べたりして、コーヒーなどを入れるタンブラーの図柄をデザインした。
絵の作者には著作権使用料が支払われ、タンブラーの販売収益はパラリンピック選手有志でつくる「日本パラリンピアンズ協会」に贈られて、競技用具の購入などにあてられるという。昨年は同じ枠組みでマスキングテープをつくり、約199万円を贈った。
アーティストのtomokoさん(42)=東京都=は、20代前半のころに、けがで利き手の右手が不自由になった。「全部を否定されたような気持ちだった」が、認められたい一心で左手で絵を描き始め、審査を経て作品がデータベースに登録された。「片手が使えない状況で始めたことが認められて、自信がわいた」。細かな線で身近なものや抽象画を描き、デザイナー3人に採用された。
グラフィックデザイナーで首都大学東京教授の菊竹雪さんは、福岡県太宰府市の太田宏介さんの絵を選んだ。「動きがある線と色合いに魅せられた」といい、いて座と果物をモチーフにした二つの作品を組み合わせて、円筒形のタンブラーをどの方向から見ても楽しめるように配置した。「人と人の中間でコミュニケーションをつくるという、デザインの根本的な役割を再認識した」と話す。
ボトルの図柄は入れ替え可能で、好きな図柄3枚とボトル1本で1500円(税込み)。東京ミッドタウン・デザインハブで開催中の展示販売「チャリティ・アート・タンブラー」は午前11時~午後7時、入場無料。全国巡回やネット販売、タリーズコーヒーでの販売も予定している。問い合わせは日本グラフィックデザイナー協会(03・5770・7509)へ。(栗田優美)