マンガ「空母いぶき」では、尖閣諸島をめぐって日中が軍事衝突――。フィクションを現実が追いかけるような護衛艦「いずも」の空母化。防衛大綱に込められた意味を識者に聞いた。
際限なくお金のかかる存在 戸高一成さん
起工時から空母として建造され、世界で最初に完成したのは1922年、日本の鳳翔(ほうしょう)でした。当時、既存の軍艦を改造した空母はありました。英海軍が空母を建造していると知った日本が先に完成させたのです。
「坂の上の雲」で日露戦争の名参謀として知られる秋山真之(さねゆき)が第1次世界大戦中の欧米を視察しました。秋山が艦上で飛行機が発着できる空母のアイデアを持ち帰ったことで、早くから空母の研究をしていたと思っています。しかし、当時の空母はあくまでも補助兵力と捉えられ、海軍における飛行機の役割は偵察が主なものとされていました。
そもそも、帝国海軍の国防方針は、日本近海に来た敵艦隊と戦うもので、専守防衛でした。それが、山本五十六というカリスマによって、その方針とは異なる真珠湾攻撃という作戦が計画されます。機動部隊を編成し、赤城など6隻の空母が投入された攻撃が成功してしまいました。
専守防衛という基本思想を超えた攻撃作戦がうまく行ってしまったことが、その後の日本の悲劇の始まりでした。そこから歴史が大きく動いていきます。同時に世界の海軍の歴史も大きく変えました。
この攻撃に衝撃を受けた米国は、大戦中に桁違いの数の空母を建造します。そして、いまも空母を中心とした世界最強の機動部隊を維持しているのです。
19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した海軍戦略家のマハンは、海軍戦略の基本は、平時から世界中に自分の基地と海路を確保して配置することだとしていました。現在に至る米国は、空母部隊自体が一種の基地の役割を果たし、世界中にその力を見せつけています。
空母そのものは攻撃に弱く、単独で行動はできません。1隻の空母に、それを護衛する艦隊が必要で、空母に載っている飛行機の部隊も、同じ数の飛行機とパイロットが、3グループ程度あって、訓練や修理をしていなければ、持続的に行動できません。際限なくお金のかかる存在です。
元海自の伊藤俊幸さんは「現場は苦労する」、元内閣官房長官補の柳沢協二さんは「無駄になりかねない」と指摘します。
ですから、世界中で、実際に米…