ノルウェーの最大野党・労働党の国会議員でEFTA・EEAの委員会の議会代表を務めるスバイン・ルオルド・ハンソンさん=2018年12月、オスロ、下司佳代子撮影
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欧州連合(EU)からの離脱が3月末に迫るのに、どんな抜け方をするのか、本当に抜けられるのか、英国では議論が続き、先が見えてこない。そんな中、一部の政治家がノルウェーをモデルにした抜け方に光明を見いだそうとしている。EUには加盟していないが、EUと密な関係をもつノルウェーは、英国の理想の姿になりうるのか。
英国は2016年6月の国民投票で離脱派が残留派を上回り、17年3月から抜け方を決める交渉をEUと続けてきた。交渉期間はEUの基本条約の規定で2年間。英国時間の3月29日午後11時、英国はEUから抜ける。
ところが、残り2カ月を切っても、英議会の中で意見が割れたままで、どんな抜け方をするのか決められていない。EUからの抜け方にはいくつものパターンがあり、「離脱度合い」には幅がある。形の上ではEUメンバーではなくても、法律やルールはほとんどEUと一緒という道もあれば、完全に決別する道もある。どちらも離脱には違いないが、離脱後の姿は全く違う。
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EU離脱でも統一市場には参加
離脱日までの時間切れが近づく英国でいま、注目されているのがノルウェーだ。
非EU加盟国だが、欧州自由貿易連合(EFTA)と欧州経済領域(EEA)に参加するノルウェーをモデルにしつつ、EUの関税同盟にも残ることを想定。「ノルウェープラス」と呼ばれるEU離脱の仕方を目指そうという勢力がある。離脱度合いは、2割くらいで、8割方EU加盟国でいるのと同じ、といった感じだろうか。
ノルウェーが入るEFTAは、EUの前身の欧州経済共同体(EEC)に対抗するものとして、1960年にできた。英国も創設メンバーだったが、途中で抜け、現在はノルウェーのほかアイスランド、リヒテンシュタイン、スイスが加盟する。域内では関税ゼロで貿易ができ、域外の国などと約30の自由貿易協定(FTA)を結ぶ。アイスランドが中国とFTAを結んだように、EFTAの加盟国は単独で他の国とFTAを結ぶことができる。
EEAは、EFTA加盟国(スイスを除く)がEUの単一市場に自由に参加できるようにする枠組みで、94年にできた。加盟国は「人、物、カネ、サービスの移動の自由」というEUの基本理念を受け入れ、工業製品の規格から環境基準、消費者保護など、EUの規則や規制に従う。EUの国々との輸出入には関税がかからない。
EEAの下では、EUに一定のお金も払う。研究助成や教育助成といったEUのプログラムへの参加や、EU内で比較的貧しい国々の振興に充てるといった名目で、ノルウェーは毎年約8億9千万ユーロ(約1110億円)をEUに支払っている。
国産の野菜ばかりが並ぶオスロのスーパーの店頭。包装にはノルウェー国旗があしらわれている=2018年12月、オスロ、下司佳代子撮影
一方でEEAは、農業や漁業の共通政策を含まない。このため、ノルウェーはEUの農産品に高い関税をかけて自国の農業を守っている。オスロのスーパーに並ぶのは、包装にノルウェー国旗がついた野菜ばかり。農業を保護することで、地方でも豊かな生活が送れるようにするとともに、南北に長い国土全体に一定の人口を保ち、ロシアの脅威から国を守る意味もあるのだという。
■現状打破の…