返礼品競争が依然やまないふるさと納税。総務省は抑制策として「返礼品は寄付額の3割以内」とする通知を自治体に出したが、この通知に従った福島県広野町では、寄付額が20分の1に激減した。通知に反した豪華な返礼品で寄付を集める自治体がなお存在し、本来、恩恵を受けられるはずの地方の町村が制度に翻弄されるという「ひずみ」が見える。
ふるさと納税1位が金券「100億還元」 規制に対抗
土日に現れ、姿消す 「闇ふるさと納税」ネットで拡散
原発事故後、町独自の判断で避難指示を出した広野町。2012年3月末の避難指示解除後、営農再開を復興の柱に据えた町は15年、ふるさと納税の目玉返礼品としてコメを選んだ。
ふるさと納税では、寄付額に対する返礼品の金額の割合(返礼率)が高いほど「お得感」があり、寄付が多く集まる傾向がある。
広野町では、通常のコシヒカリではなく、農薬の量を減らした特別栽培米を返礼品とし、15年度は、3万円の寄付で「コメ60キロとみそ1キロ」(返礼率58%)を用意。この年は696件(2088万円)の寄付があった。
コメで5割超えの返礼率は全国トップレベルの「お得感」で、今年度は「1万円で20キロのコメ」(返礼率52%)を用意。寄付を募集した昨年7~9月の3カ月で1571件(1571万円)を集めた。
こうした高い返礼率の返礼品に対し、総務省は17年4月、「お得感」で寄付を集める手法は好ましくないとして、返礼率を3割以下にするよう全国に通知していた。だが、法的拘束力がなかったため、3割超過の自治体が続出した。
広野町もその自治体の一つ。町は超過を認識していたが、遠藤智町長は「寄付に厚情をお返ししたかった」として高い返礼率を維持していたが、総務省が昨年9月に3割超の自治体名を公表すると事態は一変する。
「復興のために(ふるさと納税で税収が減る)都市部からも応援職員を送ってもらっている。広く理解される対応をとる必要があった」(遠藤町長)として、広野町は3割以下に抑えるため、寄付額を1万7千円に引き上げた。金額は据え置き、量を減らす手段もあったが、袋や箱を用意していたため無理だった。
その結果、寄付は激減。昨年10~12月は76件(76万円)にとどまり、前の3カ月の20分の1以下に落ち込んだ。今年に入っても寄付は低調だ。
ふるさと納税のそもそもの理念は、寄付を通じて、生まれ故郷や、応援したい地域の力になれるというもの。だが、復興途上の広野町の寄付の浮沈で見えたのは、寄付を左右するのは結局「お得感」というふるさと納税の現実だ。
遠藤町長は「お米を多く届けられないのは残念」と語り、今後は返礼率3割を守ったうえで寄付を増やす方策を考える。
「全国の人に広野の、双葉地方のお米を食べてもらうことが、風評払拭(ふっしょく)につながるとの思いは変わりません」
■県内8市町村 3割…