「ナンシテ ヘギマッテラノ(どうしてあわてているの?)」「アノヒト カダゴドダスケナ(あの人は頑固者だからね)」――。標準語を、難解といわれる南部弁に翻訳するアプリ「OK、Hougen」を八戸工業大学の学生が開発した。パソコンにつないだマイクに標準語で話しかけると、南部弁に変換されたことばに通訳されるというもの。将来は人工知能(AI)を活用し、より多くの言葉を南部弁に訳せるように改良するという。
開発したのは、同大基礎教育研究センターの岩崎真梨子講師の方言研究会に所属する学生たち。若い人たちが南部弁に親しんでもらい、方言の継承にもつなげようという思いが開発のきっかけだ。システム情報工学科の佐藤和範さん(3年)が中心となって、昨年4月から取り組んでいた。
アプリには、日常会話によく使う76の単語を標準語と南部弁で登録している。マイクに標準語を話すと、瞬時に南部弁の言葉がかえってくるすぐれもの。
具体的には、「おやつ」と発すると「コビリ」、「ひもでしばる」には「ユキパル」などと音声が流れる。さらに、「コビリッコダエ。アツマッテケサイ」などの例文までも読み上げられる。そのほか、画面には音声波形も表示でき、初めて聞く人にもアクセントの位置が分かる。
若い人と方言の関わりが薄くなってきているという中、岩崎講師は「方言は、地域の文化であり、その地域を理解するにはとてもいい材料。方言を研究することで学生が地域とかかわれる」と話した。
難解な南部弁から標準語への「逆」変換はいまのところ開発途上だ。ことばや音が複雑でアプリが正確に判断できないケースも少なくない。今後はAIなども駆使し、多数の単語を覚えさせ、双方向に変換できるようアプリのバージョンアップをはかる。現在は、パソコンでの翻訳だが、スマートフォンでも手軽に使える仕様も目指すという。佐藤さんは「実用化にはまだまだ改良が必要ですが、若い人が南部弁や方言に興味を持ってもらうきっかけになってほしい」と期待している。(横山蔵利)