愛知県豊田市が熱中症防止対策で進める中学校へのエアコン設置工事で、市内業者を対象にした競争入札の7割が落札率99~100%の高値となった。市は今夏から使えるように発注を集中したが、全国各地で一斉に設置計画が動き出し、下請け業者の奪い合いが価格高騰を招いているようだ。業者からは「市の予定価格内に収めるのが精いっぱい。入札での競争は二の次だ」との声も漏れる。
豊田市では昨夏、校外学習後に教室で意識を失った小学1年の男児が熱中症で死亡した。市はこれを受け、6月末までに全小中学校(103校)の普通教室や特別教室など計2249室にエアコンを整備する方針だ。担当課によると総事業費は71億円で、うち12億円は国の特例交付金を充てる。
小学校(75校)は、当初計画を前倒しして整備を急ぐために個別の入札はせず、1社に設計と施工を任せる入札方式を採り、名古屋市内の業者を選んだ。
一方、中学校27校(校舎の増築に合わせて整備する1校を除く)は25件分の一般競争の電子入札にして、1月に実施。対象は「豊田市内に本店がある業者」に絞った。予定価格(事後公表)は約5600万円~1億2300万円とした。
ところが25件のうち1件には参加業者がなく、6件は辞退者が相次ぐなどして不調だった。市は「業者側の見積もりが市の予定価格より高かった」とみる。落札された18件も、予定価格に対する落札率は2件で100%、11件で99%台になった。8件は主に参加業者が1社だけで、予定価格を上回ったため、随意契約にして予定価格以下で決定した。
豊田市内のある元請け業者は「見たこともないほど多い発注で、よく落ちたほう。価格高騰は職人不足が一番の要因だ。市の予定価格は1千万円ぐらい足りないと感じる」。別の元請け業者も「全国に計画があり、下請けの奪い合い。早い者勝ちだ」と話す。業界内では6月末までに設置できるか不安の声も聞かれるという。
市は今月、参加業者がなかった1件と不調だった6件の入札について、対象を「愛知県内に本店か支店がある業者」に広げて入札をやり直した。21日までに6件は豊田市内の業者が、1件は名古屋市内の業者が落札。7件の落札率は91・9~99・8%で、全25件の平均は98・2%となった。
ある元請け業者は、付き合いのある大手に相談して何とか下請けを確保できた。「一度は断念したが、地域の学校なので取りたかった」という。市契約課は「再入札では市外からの参加も増えたが、ありがたいことに市内業者が頑張ってくれた」と評価する。(嶋田圭一郎)