動画サイトでのミュージックビデオの再生回数が2億回を超えるなど活躍中のシンガー・ソングライター米津玄師さん。昨年末のNHK紅白歌合戦で、代表曲「Lemon」を披露したある場所が今、ファンたちの「聖地巡礼」先として注目されている。1千点を超える世界の名画の複製陶板画が並ぶその場所へ出かけた。(佐藤常敬)
渦潮で知られる鳴門海峡のそば。山をくりぬくように大塚国際美術館(徳島県鳴門市)が立つ。計5フロアに展示室があり、順路は約4キロに及ぶという。
実は私、2017年に徳島に赴任して以来、取材で20回近くここを訪れている。改めて、学芸員の富沢京子さんに案内してもらった。
正面玄関の階段を上ると、一気に荘厳な雰囲気に。米津玄師さんが生歌を披露した「システィーナ・ホール」だ。「天地創造」や「最後の審判」などキリスト教の世界を描いたミケランジェロの大作が迫る。バチカンにあるシスティーナ礼拝堂の天井画や壁画を精密に再現した空間だ。
「テレビで見た以上の迫力」
「ここがテレビに映っていた場所ですね」。友達と訪れたという福岡市の会社員、濱田真梨さん(24)は目を見張った。当初は鳴門の渦潮だけを見る予定だったが、紅白を見て立ち寄ることにしたそうだ。濱田さんは「テレビで見た以上の迫力」と話した。
そういえば、「Lemon」のミュージックビデオは教会が舞台。米津さんの地元・徳島で曲の世界観を表すのは、ここ以外にないような気がする。
横綱白鵬が徳島出身の妻との結婚式を開いたのもこのホールだった。来館者の記念撮影に応じていた富沢さんが「毎年2月に開く『システィーナ歌舞伎』も人気ですよ」。礼拝堂の「洋」の空間と「和」の古典芸能が融合する異色の舞台。片岡愛之助さんらが出演する今年の公演は2月22日に始まった。
鳴門の渦潮の見頃は春と秋。この時期はオフシーズンだが、1月の入館者は昨年同月の1・5倍。公式ホームページ(
http://www.o-museum.or.jp/
)のアクセス数も今年1月1日、解析を始めた09年以降で最高を記録したという。
あのホールでフラワーシャワー
この美術館、11年には世界最大級の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の「行ってよかった美術館&博物館ランキング」で1位を獲得したこともある。
人気の秘密はやはり「複製画」ならではの自由度の高さ。一部を除いて作品と並んでのツーショット写真もOK。手で触れて画家の筆づかいを確かめることもできる。
青い天井が印象的な北イタリアのスクロヴェーニ礼拝堂を復元した部屋では結婚式も開ける。壁面を飾るのはイタリアの画家ジョットが描いた聖書の物語だ。富沢さんは「現地では鑑賞時間は15分ほどに限られていますが、ここは貸し切りができます」。式の後は、米津さんが歌ったシスティーナホールで、一般の入館者らも参列する「フラワーシャワー」の演出もある。過去10年間で100組以上が式を挙げたという。
■ここでしか見られない「最後の…