デジタルアーカイブを使った国内外の取り組みを紹介するフォーラムが27日、東京都千代田区の日比谷図書文化館であった。戦時下の広島や呉を舞台にしたアニメ映画「この世界の片隅に」の片渕須直監督や、広島の高校生がパネル討論に登壇。次世代の資料収集や保存、活用法について議論した。
カメラを向ければ被爆前の広島 高校生らがアプリ開発
「昔ここで遊んだ」被爆前の広島写真、AIでカラー化
「この世界の片隅に」舞台を巡る
「平和記念公園の下に、私たちと同じような暮らしがあったことを想像できる若者が少ない。広い視点を持ってもらうために活動しています」。パネリストとして登壇した広島女学院高2年の庭田杏珠(あんじゅ)さんは会場にそう訴えかけた。
活動とは、一昨年秋ごろから東京大大学院の渡邉英徳教授が広島女学院高とともに取り組む「記憶の解凍」のこと。戦前の広島の白黒写真に色づけするプロジェクトだ。生徒がAIに写真を読み込ませて色づけし、渡邉教授がソフトで補正する手順だった。だが庭田さんは「私も補正をやりたい」。あっという間に技術を習得した。
さらに写真の持ち主にインタビューし、写真の中の花や洋服の色などの記憶を聞き取った。それをもとに色づけした写真を持ち主に贈ると、次々に遠い記憶を語り始めた。「僕にはない発想だった」。渡邉教授は目を細める。
情熱を注ぐきっかけとなったのは、中学3年の時。資料館で被爆前後の街を比較する地図に出会い、かつてはカフェや映画館、理髪店などが立ち並んでいたことを知った。悲惨な写真に目を向けられず、平和学習が苦手だった自分が変わった。「被爆の歴史を自分事として捉えなければ」
活動が知られるようになり、全国から講演依頼が相次ぐ。学業の合間を縫い、プレゼンを準備する日々。昨年暮れはニューヨークの国連本部やユネスコ本部でも成果を報告した。「デジタル技術で共感の輪を広げ、記憶を継承していきたい」
■「この世界の片隅に」資料探し…