東京大学総合研究博物館で3月2日から始まる企画展「家畜――愛(め)で、育て、屠(ほふ)る」に、天皇陛下の馬2頭の剝製(はくせい)が初公開される。陛下が皇太子だった1979年にアルゼンチン大統領から贈られ、数年前まで「こどもの国」(横浜市青葉区)で子どもたちに親しまれてきた極小馬だ。
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地面から肩までの体高が90センチ足らず。「ファラベラポニー」と呼ばれる。2頭ともオスで、名前は黒い方が「ファルーチョ」、茶と白のぶちが「ガルーチョ」。来日時は6歳だった。「殿下の3人のお子さんの遊び相手に」という大統領の心遣いだったという。
2頭は、両陛下のご成婚を記念して開園した「こどもの国」の「雪印こどもの国牧場」で大切に飼われた。馬では異例の40年以上生きたが、2013年夏にファルーチョが、翌夏にガルーチョが死んだ。「天寿をまっとうした」と展示監督で博物館教授の遠藤秀紀さん(53)は話す。
牧場で98年から死ぬまで約16年間世話をした飼育員の小林明日香さん(43)は、今も2頭を懐かしむ。朝6時過ぎに出勤すると2頭の安否を確かめ、帰宅前にも見回るのが日課だった。最後の数年は「高齢の両親をいつも自宅に残している感じ」で休暇の時も見回りにきた。「母子手帳」ならぬ小林さんの「馬の手帳」には、予防接種の記録や2頭の様子がイラスト入りで書き込まれている。
小林さんによると、2頭は仲が…