(語る 人生の贈りもの)里中満智子さん
里中さんは、話す内容を吟味しながら、はっきりとした口調で質問に答えてくれた=2019年1月31日、東京都渋谷区、池永牧子撮影
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1月28日から2月15日まで朝刊紙面に掲載された、漫画家・里中満智子さんが半生を語る全14回の連載が、こちらでまとめ読みできます。
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小さいころから考古学とか古代史の勉強がしたかったんです。いつかは大学で学べるかとも思ってたんですが、結局、その機会がなかった。でも、古代を舞台にした漫画を描くようになって、専門家の方から直接、最新の学説をうかがう機会が増えました。
《16歳の時、「ピアの肖像」でデビュー。「アリエスの乙女たち」など多くの作品を送り出してきた。「歴史もの」も多く、持統天皇が主人公の「天上の虹」は里中ファンのみならず、古代史好きの間でも高い評価を得た》
古代の人って素直だったと思うんです。ふられたり、不倫の恋に苦しんだりした思いを「万葉集」などでうたっている。いつか作品にしたいと考えていました。
デビューして20年たったころ、ようやく飛鳥時代を舞台にした漫画が描けることになって。誰を主人公にしようか考えた時に、頭に浮かんだのが第40代の天武天皇の后(きさき)で、のちに41代を継いで女帝となる持統天皇だったんです。
《連載開始の1980年代、持統天皇のイメージは決してよいとは言えなかった》
自らが産んだ草壁皇子を跡継ぎにするため、同じく天武天皇の子の大津皇子に謀反の疑いを着せて殺してしまう。完全な悪役扱いでした。
持統は父の天智天皇や夫の天武天皇が目指した日本を強い国にする夢を受け継ごうとした。大津は時代の犠牲者だったのかも。でも、きっと魅力的な人物だったと思ったので、そう描きました。今の勤務先の大阪芸大に行くのを決めたのも、キャンパスから大津の墓があるとされる二上山が見えるから。歴史の舞台を見つめていたかったんです。
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さとなか・まちこ 1948年、大阪市生まれ。64年、「ピアの肖像」でデビュー。「あした輝く」「姫がいく!」で講談社出版文化賞、「狩人の星座」で同漫画賞受賞。「天上の虹」「女帝の手記」など歴史系の作品も多い。大阪芸術大学教授。
お小遣いのほとんどを貸本屋で
1956年、家の近くで、両親、妹と。「母親は父のことを心から愛してました。毎日帰ってくるたび、うれしそうだった」
《里中さんは1948年1月、大阪市で生まれた》
父は大きな会社で働く調理師でした。元々は伊勢の二見浦の料亭の跡継ぎだったのですが、祖父の道楽が過ぎて店が倒産。母の願いもあって、給料取りになりました。
記憶に残っているのは、両親の…